その1
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毎年サボっていた年末の大掃除を今年はやる気になった。
使わない雨戸を戸袋から引き出すと、一緒に干からびたネズミの死骸が出てきた。
和室の畳を上げると、ぺっちゃんこになった小人さんが出てきた。
本を整理していると本棚の後ろからミイラになった小説家が出てきた。
もう怖くて何もできなくなった。
天井を見上げるとなぜか真ん中へんがたわんでいる。
何か大きなものが天井裏にあるようだけれど確かめる気力はない。




その2
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年末の大掃除をしようとして思い出した。
大掃除のやり方とコツという本を買っていたんだ。
それを読まなくては始まらないと、ぐちゃぐちゃになった本棚を探した。
なかなか出てこないので、本を全部整理してみたけれどみつからなかった。
台所に置いたかもしれないと思って、ぐちゃぐちゃになった台所を探した。
なかなか出てこないので、台所をすっかりきれいに整頓した。
それでも本は出てこなかった。
押し入れに放り込んだかもしれないとぐちゃぐちゃになった押し入れを……

本は結局みつからなかったけれどなぜか家はきれいになっていた。



その3
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大掃除も終わってゆっくりしていると奇妙なうわさが耳に入ってきました。
今年の年末は眠れなくて困る人がいっぱいいるらしいのです。
不眠症の友達がそう言っていました。
なぜって眠れない時に数えるはずの羊さんが来てくれないというのです。
そこでその原因をあれこれ調査をしてみました。

羊さんは干支の引継ぎのセレモニー出席のためにあちこちで引っ張りだこで大忙しでした。
それで睡眠担当の羊さんまでが引っ張り出されていたのです。



その4
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大掃除は嫌だ。
毎年大掃除の時期が近づくと夢に見てしまう。
それは私にとって悪夢だ。
ところがその見たはずの夢をよく覚えていない。
「ごちそうさま」
目の前に獏が現れた。
「あなたは全然悪夢を見ないのね。あなたの見る、一年一度の大掃除の夢でやっと悪夢にありつけるんだよ」
聞いてみると獏は人の悪夢しか食べないらしい。
そしてまた、獏は一人の決まった人の夢しか食べないのだと言う。
その獏は痩せ衰えていた。



その5
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大掃除に取り掛かって間もなく、片付け始めた本棚の一冊の本が気になった。
面白そうなタイトル。
後で読もうとテーブルの上に置いた。
でもどうしても気になったので初めの所を読んでみた。
面白そうだ。
読み始めると止まらなくなり、いつの間にか本の世界に入り込んでいた。
もうやめられない。
掃除そっちのけで読み続け、やっと読み終わった時には年が明けていた。
そして思い出した。
最後の意外な結末まで読んでやっと、去年もこの本を大掃除の日に読んだことを。
一年ですっかり本の内容を忘れていたのだ。

あ……
ひょっとして毎年この本を読んでいるのかも……




おわり




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by marinegumi | 2014-12-30 14:51 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

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偕成社のサイトで連載されている、高井信さんの『小学生のためのショートショート講座第5回「ショートショートの種」』です。
イラストは、僕が描かせていただいています。

偕成社ホームページ「ウエブ連載」のページ
『小学生のためのショートショート講座』記事一覧
「第5回 ショートショートの種」

毎回お見逃しなく。
ショートショートを書く小学生が増えて、また再びショートショートの黄金時代が来ればいいですね。

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by marinegumi | 2014-12-21 23:55 | 写真や お絵かき | Comments(0)

マッチ売りの少女
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マッチ売りの少女は最後のマッチを取り出しました。
少女がマッチをすると、あたたかい光に包まれました。
光の中には少女の亡くなったおばあさんが立っており、おだやかにやさしく笑っています。
「おばあちゃん!」と、少女は大声を上げました。
「ねぇ、わたしをいっしょに連れてって。このマッチの火が消えたら、おばあちゃんもどこかへ行っちゃうんでしょ。温かいストーブや、ガチョウの丸焼きや、きれいなクリスマスツリーみたいに」
「なに言ってるんだいこの子は、しっかりおし。あんたが死ぬのは大みそかの夜だよ。今はまだクリスマスイブじゃないか」




ヘンゼルとグレーテル
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ヘンゼルとグレーテルはクリスマスの夜、森の中においてけぼりにされました。
寒くておなかがすいて二人は抱き合い、フラフラになって森をさまよい歩きました。
やがて向こうの方に明かりが見えてきます。
近づいて見るとそれは大きなクリスマスケーキでした。
魔法使いのお菓子の家がクリスマスバージョンになっていたのです。
「すご~い!」
「おいしそう!」
二人は目を輝かせました。
「そうだ、グレーテル。今夜はクリスマスだけど、お前の誕生日でもあるよね。今まで一度も祝ってもらえなかっただろ」
ヘンゼルはまきを拾ってケーキの上に7本立てて火を点けました。
「ロウソク代わりだよ。さあ、吹き消してグレーテル」
でも火は大きく燃え上がり、とても吹き消せません。
クリスマスケーキの家は焼け落ち、中で眠っていた魔法使いは死んでしまいました。
ヘンゼルとグレーテルは焼ける前にたっぷりケーキを食べたので、元気よく帰り道を探しました。




赤ずきん
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「赤ずきんや。クリスマスケーキが焼けたからおばあさんのところへ持って行っておくれ」
「はーい」
「あんまり揺らしたら崩れるから気を付けてね」

赤ずきんはバスケットに出来たてのケーキを入れて森の小道を慎重に歩いて行きました。
「お嬢ちゃんどこへ行くんだい」
悪いオオカミが声をかけます。
「しぃ~。だまってて。バスケットを揺らしちゃうとケーキが崩れるでしょ」
赤ずきんはバスケットが揺れないように小声で答えます。
「わかったよ。お邪魔したね」
オオカミも小声でそう言いながらすごすごと帰っていきます。

「お嬢ちゃん。この辺には悪いオオカミが出るから気を付けるんだよ」
通りかかった猟師のおじさんが言いました。
「しぃ~。そんなこと知ってるわ。気が散ってバスケットを揺らしたら中のケーキが崩れるでしょ」
と、小声で言います。
「おお、そりゃあ悪かったね」
猟師のおじさんも小声で言い、頭をかきながら行ってしまいました。

「おばあちゃん。おばあちゃん。赤ずきんよ」
赤ずきんはバスケットを揺らさないように小声で言いながら、おばあさんの家のドアをゆっくりあけました。

「赤ずきんや~!よく来てくれたね。おばあちゃんはうれしいよ!」

おばあさんは大声でそう言いながら走り寄って来ると、赤ずきんを抱き上げ、グルんグルんと振り回しました。

「おいしいね。おばあちゃん」
「ほんとだね。お前の母さんのお菓子は天下一品さ」
ケーキはぐちゃぐちゃに崩れていましたが、味には変わりはありませんよね。




おわり




この作品はりんさんの「おとぎ話(笑)クリスマスバージョン」に乗っかって書いたものです。
りんさんのコメント欄に書きかけて、長くなりそうだったのでこちらでアップしました。

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by marinegumi | 2014-12-19 01:10 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

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幸せな子供時代を過ごしたと思う。
クリスマスが近づくたびに幸せだったあの頃を思い出す。
毎年必ず両親は私のためにクリスマスプレゼントを、心を込めて用意してくれた。
その包みを開くとき、ふと、こんな素敵なプレゼントをもらえない子供が世界中にはきっとたくさんいるんだろうなと考える事もあった。
でもすぐにそのプレゼントに夢中になってそんなことは忘れてしまったものだ。

大人になってちゃんと結婚をしたけれどなぜか子供に恵まれなかった。
自分の子供にクリスマスのプレゼントを選ぶ時が来るのが楽しみだったけれど、それは今さら仕方のないことだ。
ささやかな住まいで日々を送り年を取り、やがて連れ合いを亡くし、一人暮らしの十年近い年月を過ごした。
そして今、理解していた。
世界中にいる、両親からクリスマスプレゼントをもらえない数えきれない子供たちも、きっとささやかなプレゼントを手にしていたんだと。
私は今、白いあたたかなファーの付いた真っ赤な服を来て雪の野原に立っている。
背中には中身が一杯の大きな白い袋がある。
あごに手をやると豊かな白いひげだ。
トナカイに引かれたそりが目の前にゆっくりと現れた。

今になってサンタクロースは本当に居たんだと言うことが判った。
私は子供時代に毎年プレゼントをもらったままで、自分の子供や人々にお返し出来ていない。
そのチャンスがなかった。
人は誰でも自分の人生でもらった分だけのプレゼントを誰かにお返しをしてから天国に行くんだね。
それがサンタクロースだったんだね。




おわり




これは、きのう書いたツイッター小説を元にして書いたものです。

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by marinegumi | 2014-12-15 18:27 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

写真はサンタクロース村です
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隠居して久しいサンタクロースは、クリスマスが近づいても毎日をゆったりと暮らしていました。
若かった頃はそれはもう忙しい思いをしたものです。
一か月ぐらい前から届く世界中の子供たちからの手紙を読み、それぞれに合わせプレゼントを用意してクリスマスが終わるまでにすべて配り終わるのですから、それはもう目の回るような忙しさでした。
思い出すだけでもじんわり汗ばんでしまうような気がしました。
でも次第にサンタクロースを信じている子供たちの数も減り、サンタの代わりに子供たちの両親がプレゼントを用意するのが当たり前のように変わってしまいました。
そしてある年、子供からの手紙が一通も届かなかったのです。
それでサンタクロースは隠居を決心したのです。

それはサンタの隠居生活12年目の事でした。
彼の家の郵便受けに一通の手紙が舞い込んだのです。
それは日本と言う国に住む一人の子供からのものでした。
封を切り、便箋を開いてみるとたどたどしいひらがなばかりで書かれています。
サンタクロースは、昔はあらゆる国の文字がすらすら読めました。
でも、今はその手紙に何と書いてあるのかが一瞬判らなかったのです。
ところが目を走らせているうちに次第に思い出してきました。
間もなく書いてある内容も理解できるようになっていました。

  サンタさんへ 
  こんどのクリスマスにはプレゼントはいりません
  ほんとうはほしいけれどがまんします
  おかあさんからきいたんです
  サンタさんはソリからおちてけがをしたんでしょ
  あしのほねをおってしまったそうですね
  ゆっくりやすんでなおしてください
  プレゼントは らいねんでいいです

                    まもる

サンタクロースは一瞬、自分が足の骨をいつ折ったのか思い出そうとしてしまいましたが、すぐに気がつきました。
これは、このまもるという子供の親が、まもる君に嘘をついているんだと。
何かの親の事情でプレゼントを用意できなかったんだなと。
サンタクロースは椅子に座って目をつぶって少しの間考えている風でしたが、次の瞬間勢いよく立ち上がりました。
そしてクローゼットの扉をあけました。
そこにはちゃんと手入れされた真っ赤なサンタクロースの服が掛けてあったのです。
「そうかそうか。そういう事なら本物のサンタクロースの出番じゃな」
手早く着替えるとドアを開け、庭に向かって叫びました。
「お~い。ルドルフ!仕事じゃ、仕事じゃ」
サンタクロースはとても楽しそうでした。




おわり




うーん。
去年と打って変わってなかなか書く気が起きない今日この頃です。
去年はクリスマスのテーマでたくさんのお話を書いたのが嘘のようですね。
数えてみるとなんと13話も書いていましたよ。
中には12枚の作品もありますね。
それに引き替え今年は……
これではいかん!と言うわけで、無理やり書いてみました。
やっぱり書いてみるものですね。
書いているうちに楽しくなってきますね。

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by marinegumi | 2014-12-14 17:35 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

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はい。
次の方どうぞ。
どうぞ、どうぞ、おかけになってくだされ。
今日はサンタクロースのアルバイトの募集に応募して来ていただいてありがたく思っております。
私たちの仕事と言うのは、人知れず人家に忍び込み、子供たちの枕もとに、彼らに気づかれないようにプレゼントを置いてくるという事なのはご承知だと思いますがのう。
いやあ、ね。
最近は私達サンタクロースも歳を取って来ましてな、目は悪くなるわ、足腰は弱るわで、安全にそりを運転したり、気配を殺して歩いたり、機敏に行動することが出来なくなってきたわけじゃ。
今年はなんと一度に15人の退職者が出てしまってのう。
とりあえず緊急にアルバイトを募集することになってしまいましたわ。
ところが、誰でもいいというわけではない。
まあ、そりの運転ぐらいは少しの訓練で覚えられるのじゃが、今言ったように、気配を押し殺して静かに行動する必要があり、それでいて敏捷性も求められるのじゃ。
あなたはその辺は自信があると書いておられますが。
なるほど、なるほど。
それは確かにそうだとお見受けします。
う~ん、しかしですなあ、子供というのは悪賢いものでな。
眠っているように見せて毛布をかぶってベッドで薄目を開けていたりすることもある。
そんな時に正体を見られてしまう事もないことはないので、やはり見かけは大事なものなんじゃ。
あんたのその顔はどうにかならんものかのう?
目の玉が一つ垂れ下がって、頭は脳みそがむき出し、顔は血だらけだし。
いくらこの仕事にあなたが適任だと言われましてもなあ。
その顔はどうにかならんもんかのう。
え?
幽霊はいつまでも死んだときの姿のままでいなくてはならない?
どうしようもない?
それでは残念じゃが採用は見送らせていただくほかありませんのう。
ホーッホーッホー。

次の方どうぞ。



おわり



はるさんともぐらさんの企画でクリスマスパーティー用のお話を書きました。
ちょっとグロですけれど(笑)

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by marinegumi | 2014-12-03 18:08 | 掌編小説(新作) | Comments(6)