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偕成社のサイトで連載されている、高井信さんの『小学生のためのショートショート講座 第7回「ショートショートの芽生え(後編)」』です。
イラストは、僕が描かせていただいています。

偕成社ホームページ「ウエブ連載」のページ
『小学生のためのショートショート講座』記事一覧
第7回 ショートショートの芽生え(後編)


この機会にこの講座で紹介されている作品を改めて読み直すことが多いのですが、ほとんど細かいところは忘れているもんですね。
そして改めてストーリーや文章や構成がよく出来ていると思うことが多いです。

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by marinegumi | 2015-02-22 00:51 | 写真や お絵かき | Comments(4)

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私の願い事は全てが叶った。

もう何時だったか思い出せないほど遠い昔のことだ。
ある日、私は自分の願い事が全て叶うようにと強く願ったのだ。
するとどこからともなく声が聞こえた。

  それがお前の望みならば叶えてやろう。
  しかし叶った願い事の取り消しは出来ないぞ。
  よーく考えて願うのだ。
  そして毎日必ず新しい願い事を欠かさずに続けなければならない。

それからと言うもの、毎日毎日願い事をしてきた。
最初に願ったのは「不老不死」だった。
そのおかげで、かれこれもう二百年以上毎日願い事を考え続けている。
初めの頃はうれしくて、興奮して、夢中で毎日を過ごした。
しかし、今はもうすっかり飽きてしまった。
もう願い事を考えるのも面倒になっている。
それでいつか願い事をせずに一日を終わろうとしたこともあった。
すると十二時が近づくにつれて息苦しくなった。
そのまま気が遠くなりはじめ、自分の存在そのものが消えて行くのを感じたのだ。
慌てて適当な願い事を唱えた。
それからの毎日は適当な願い事をでっち上げるようになった。

そんないい加減な願い事のせいで世界はこんなに醜く混沌としている。
まるでこの世は地獄ではないかと思う事もある。
最後には世界の終りを願ってしまった。
そう、世界は一度終わったのだ。
しかし私はまだ生きていて、また何事かを願わなければならなかった。
ほかに考えようがなかった。
「世界よ始まれ」
するとまた自然に新しい世界が生まれてしまうのだ。

私は神なのだろうか?
それとも悪魔なのだろうか。
こんなひどい世界を創ってしまうのだからきっと悪魔なのだろう。
あの時、聞こえた声は悪魔であることに飽きてしまった悪魔なのかもしれない。
あいつが自分の役目を私に託したのかもしれない。

何度も世界を滅ぼした今、もう少しまともな世界を願ってみようかと思い始めている。




おわり




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by marinegumi | 2015-02-18 16:08 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

父、買える (7枚)

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幼いふたりの兄弟は、父親が出て行ってしまってから母親の顔ばかり見て暮らすようになっていた。
あの日から母親は無口になり、笑顔を二人に見せることはほとんどなかった。
「ねえ、お兄ちゃん」
コウは兄のショウに思い切って声をかけた。
「なんだよ?」
「友達に聞いたんだけどさ。隣町にお父さんを売っているお店があるらしいよ」
小学校からの帰り道だったが、家に帰りたくなさそうな兄の足取りは重かった。
あちこち寄り道ばかりで遅々として進まなかったのだ。
コウは母親が心配で、一刻も早く帰りたかった。
「もう僕たちのお父さん、帰ってこないよね」
「たぶんな」
「だからさあ、新しいお父さんをお母さんに買ってあげたらと思うんだ」
ショウは冷たい目でコウを見た。
「お前、そんなお金どこにあるんだよ。きっと高いだろ?」
「それがさ、その友達はそんなに高くないって言ってたよ。出せるだけのお金を出して本当にお父さんが必要なんだということがわかってもらえたらおまけしてくれるって」
「そんな事信じられるかよ」
ショウはそう言うとあとは黙ってしまった。

次の日曜日の朝。
兄弟はお互いに、ありったけの小遣いを貯金箱から出し、大事にポケットに入れて自転車に乗って走り出した。
懸命にペダルをこいでやっと隣町に着いたのはもう昼前だった。
コウが友達に描いてもらったという怪しげな地図を頼りに、人に何度も聞きながら数時間後、やっとその店を見つけた。
新しいきれいな住宅やコンクリートのビルの裏の方、古びた木造住宅が残されている路地の奥にその店はあった。
風が吹いて紙くずや落ち葉が飛ばされて吹き溜まりになっている突き当りに少し傾いた瓦屋根の商店があり、木枠のひびの入ったガラス戸に一枚の破れかけた紙が貼ってある。
それに雨でにじんで消えかけている筆文字で「父、売ります」と書いてあるのがなんとか読み取れた。
汚れたガラスの向こうをコウが覗き込んだ。
木の低い台の上に真っ白い人形のようなものが5~6体並んでいた。
恐る恐るガラス戸を開けて中へ入ってみる。
その人形は目鼻もなく、髪の毛も生えていない。
全身が真っ白で、みんな同じように見えた。
ちょっと昔のアニメーション映画の「ベイマックス」に似ていないことはないが、あれよりはずっとスマートだ。
店の中に足を踏み入れると、人形は外から見えるものだけではなく反対側の台の上や、もっと奥までずらりと並んでいるのだった。
そして何やらの気配がしていた。
その人形たちはほとんど身動きをしないものの確かに生きているような気がした。
みんながみんな静かな呼吸をしているように思えた。
「なんだね?子供たち」
店の奥の暗闇から一人の老人が現れた。
コウが驚いて言葉が出ないでいると、ショウが彼を押しのけて老人の前に来た。
「ぼくたち、お父さんがほしいんです。ここで買えると聞いて隣町から来たんです」
「おうおう、よく来たね。隣町からは大変だったろう。そうかそうか」
老人はどこが目なのかシワなのかわからないような笑顔でそう言った。
「で、お母さんと相談してきたのかい?」
「いえ、お母さんには内緒で来ました」
「それじゃあお金はどうしたんだ?」
「ぼくと弟が小遣いを全部出し合って来たんです。これで買えるでしょうか?」
コウとショウはポケットからお金を取り出して、そばのテーブルの上に並べた。
老人はそれを見もせずにうなずきながら言った。
「そうか、そうか。それじゃあ母親思いの君たちのために立派なお父さんを選んであげようね」
老人はメガネをかけると並んでいる白い人形を一つ一つ確かめるように見て行った。
どれもみんな同じように見えるけれど、違いがあるんだろうかと兄弟は考えた。
老人はやがて、ある一つの人形の前に立ち止り、その手を持ち上げ二度三度上下させた。
指のあるような無いような、先が丸っこくなった手だ。
「ようし、お前がいいな」
そう言うと老人はその人形を台の上から降ろして立たせた。
足を投げ出して座っていた人形は生きているようにふわりと二本の足で立った。
「さあ、連れてお帰り」
兄弟が店を出るとその人形は歩いて二人の後を付いてきた。
そして驚いたことに店のガラス戸をちゃんと閉めたのだった。

人形はショウの自転車の後ろに乗った。
ちゃんと荷台にまたがり、ショウの腰に手を回す。
もう夕暮れの迫る街を二台の自転車は走った。
夕陽に色づいた石の橋を渡り、公園の横を通り、交通量の多い道路を走り抜ける。
長い彼らの影が道路に伸びている。
一つはひょろ長く伸びたコウとその自転車。
もう一つはショウとびっくりするほど大きな人形が乗った自転車の影だ。

やがて狭い路地の我が家へと兄弟は帰ってきた。
自転車の荷台から降りたとき、その人形はすっかり父親になっていた。
父親は二人の前に立つと彼らの頭に手をやり髪の毛をくしゃくしゃにかきまわした。
「こんなに遅くまでどこへ行ってたんだ!お母さんが心配するじゃないか」
腰に手を当てて、その言葉とは裏腹に二人を優しい目で見ている。
「家に入りなさい」

家の中ではもうすっかり夕食の支度が出来上がっていた。
母親は以前のままの優しい笑顔で二人を迎えた。
「お母さん。お父さんを買って…、いや。お父さんが帰って来たよ」
母親は子供たちの後ろに立っている父親と顔を見合わせる。
その笑顔がくしゃっと崩れ、目からみるみる涙があふれ出した。




おわり




「とらびし秘宝館」の矢菱虎犇さんが『父帰る』のパロディー作品として書かれた「父、帰る」「父、還る」「父、カエル」の三作品を始めとする自然発生的な競作大会が盛り上がりました。
この作品は、その競作の僕の作品、第二弾として書いたものです。
第一弾は「父、孵る」ですが、その後雫石鉄也さんが「父、替える」を書かれ、りんさんが「父変える」を書かれ、さらにはるさんが「父、帰る」を書かれています。
そして、さらにさらに矢菱虎犇さんが「父、孵る」「父、換える」「乳、替える」(笑)の三作品を書かれています。
いやいや矢菱さん、すごいものです。

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by marinegumi | 2015-02-08 23:11 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

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ボクはどうして
こんな小さな星に
ひとりぼっちで生まれて来たんだろ
ボクはどうして
こんな小さな町で
ひとりぼっちで暮らしているんだろ

ボクが生まれてから
とても長い時間がたったような気もするし
ほんのこないだだったような気もするし
ボクはもうおじいさんなのかもしれないね
ボクはまだ赤ちゃんなのかもしれないね

ボクはどうして
こんな小さな声で
聞く人もない歌をうたっているんだろ
ボクはどうして
こんな小さな指で
聞く人もないギターを鳴らしているんだろ

ボクのささやかなこの歌は
いつか誰かの心までとどくような気もするし
誰にも意味さえわからないような気もするし
ボクはまだ歌い続けてもいいのかな
ボクはもう歌わなくてもいいのかな

ボクはまだ歌い続けてもいいのかな
ボクはもう歌わなくてもいいのかな






久しぶりに詩を書きました。
「詩」と言うよりも「詞」かもしれません。

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by marinegumi | 2015-02-07 18:18 | | Comments(2)

父、孵る (5枚)

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「ただいま~」
いつもの時間に父が帰ってきた。
父は娘の私には目もくれずに台所にいる母の所へ向かった。
あとに加齢臭が残る。
「母さんや、ほらすごい物を買って来たぞ~」
そう言いながら父は母に紙袋から怪しげなビンを取り出して見せた。
「なんですかそれは?どうせまた精力剤かなんかでしょ」
父は最近歳のせいか、毎日「疲れた、疲れた」が口癖のようになっている。
「これは最近出来た高架下の薬局で勧められたんだよ。これを飲むと細胞から若返るらしい。若返ると言うよりも生まれ替わると言った方がいいくらいだとさ」
「それで?いくらで買ったんですか?」
「うむ、まあ……」
父が口ごもる時はかなり高かった時だ。
問い詰めると機嫌が悪くなるのを母は心得ていて、それ以上は聞かない。
「この薬剤は最新のテクノロジーで作られているらしい。なんにしてもカエルの細胞から作られた多能性幹細胞がなんちゃらで、iPS細胞もまっ青てな感じらしいんだ。これさえ飲めば元気モリモリ、気分爽快、体力メキメキてな感じだぞ。母さんや」
などと言いながら自分の部屋に入って行く父を、私と母は無言で見送り、顔を見合わせた。

一時間後。
私も手伝い、夕食の支度ができた。
父を部屋まで呼びに行く。
父が書斎と呼んでいる三畳の狭い部屋だ。
ところが声をかけても返事がない。
疲れて居眠りでもしているのかもしれないと思ってドアを開けて中へ入った。
父の姿がなかった。
そして、いつも座っている机の前の椅子の上に異様なものを見つけた。
椅子の座面を占領して、透明なゲル状のかたまりがあり、その中に黒い粒々がたくさん見える。
それからは生臭いにおいがしていた。
似たものと言えばカエルの卵だ。
ただひどく大きい。
「お母さ~ん!ちょっと来て!」
二人で改めてその卵(?)を観察した。
「なあに?これ~。気持ち悪い~」と母。
「お父さん、さっき何だか変な薬を買って帰ってたでしょ。たぶんあれを飲んじゃったからこんななっちゃったんだわ」
ゲル状のかたまり中にある何百と言う黒い物は一つ一つがそれぞれ勝手に気まぐれに動いていた。
そしてそのうちの一つをじっくり見ると……
「これは目だわ!」私は驚いて大きな声を上げた。
「こっちには手の指や鼻があるし、内蔵っぽいのもたくさんある」
「これってお父さんなのかも」のんびりした声で母が言う。
「そう言えば、生臭さの中にお父さんの加齢臭も混じってるわね。と言う事はあの変な薬が効いてお父さんが生まれ替わってる真っ最中ってこと?」
「放って置きましょうか?どうにかなるでしょ」
母ののんびり屋さんの性格ここに極まれり、って感じ。

母と二人で食事をしている時に父が食堂に入ってきた。
「やあ、お待たせ!」
なんか溌剌としている。
いつもカサカサだった肌もうるおっているように見える。
いや、なんだか湿っぽくてぬめっとしているような感じだ。
父は椅子に座ると見たこともないほど大きな目を見開いた。
「おお、今日はなんだかごちそうだなあ。うまそうだ」
父の口から長い舌が飛び出し、おかずの唐揚げを巻き取るとそれを口に運んだ。
「ケロケロ、うま~い」

日にちが経つとそんな変な行動は少なくなって行った。
ぬめっとしていた肌も普通に戻ったようだ。
そして、あのきつかった加齢臭がすっかりなくなった。
それはいいけれど、いつまでも生臭いのにはちょっと困っている。




おわり



この作品は「とらびし秘宝館」の矢菱虎犇さんの作品「父、カエル」「父、還る」「父、帰る」に触発されて書いた作品です。
皆さん、まだまだ書けますよ~
「父、買える」
「父、変える」
「父、飼える」
「父、替える」
「父、代える」

雫石鉄也さんが「父、替える」を書かれました。
この際みんなで書きましょう。
『「父、帰る」競作大会』みたいな感じで。


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by marinegumi | 2015-02-03 23:35 | 掌編小説(新作) | Comments(6)