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「その子、とってもかわいいんだ。顔がね」
と、マモル君は言う。
「でもさー、ことばづかいがねえ……」
「言葉遣いがどうしたの?」
マモル君は夢の話をしている。
毎晩の夢に出てくる女の子の話だ。
「その子さあ、不良かもしれない」
「不良なの?」
「今は家出しててさ、悪いやつらとつき合ってるみたいでさ。すぐに『うぜ~』とか『頭んくるぜ!』なんて言うんだよ」
「まあ、まあ」
私はニコニコして聞いていた。
夢の中の話だから、そんな子と遊ぶのやめなさいなんてことも言えないし。
「このあいだ『お前にこれやるよ』ってさあ、ナイフをくれようとしたんだ。ぼくがいらないって言うと『えんりょすんなって。どうせ万引きしてきたんだからさ』ってさ。ぼくそれでも断ったよ」
「さすが。私の子供!」
「でもね。やっぱりその子、女の子だね。花が好きなんだよ。でも、どこにも花が咲いてなくてさ。盗もうと思っても花屋さんもないんだ。その子が住んでる街は」
私はマモル君の机の上にある花束を見た。
「あ、わかった。それであれを買ってきたの?」

その夜、寝る前にマモル君の部屋をそっと覗いてみた。
かわいい寝息を立てて、あの花束を両手で持って胸の上に置いてマモル君は眠っていた。
夢の中のあの子へのプレゼント。
可愛らしい事を考える。
ドアを閉めようとして、ふと気がついた。
朝になって、あの花束がそのまま有ったらマモル君はどう思うだろうかと。
きっとあの子に渡せなかったと思ってしまうかも知れない。

私はそっとマモル君の手をほどき、花束を持ち上げた。
静かにドアを閉めると花瓶に水を満たし花束を入れ外へ出て、庭の花壇の花の中に紛らせた。

あくる日、いつもよりマモル君は起きて来るのが遅かった。
ドアを開けるとマモル君は眠ってはいなかった。
ベッドに上半身を起して座ったまま、あらぬ方向を見ている。
「どうしたの?」
マモル君はゆっくりと私の方へ目をやった。
「あの子が言ったんだ」
「え?」
一瞬何の話か分からなかった。
「あの子が言ったんだ。『あんたのおふくろは悪いやつだ』って。『自分の子供のプレゼントを取り上げるなんて、泥棒より悪いやつだ』って」
「あ、あの花束の事?」
「『そんなやつ殺してしまえばいい』って」
マモル君がゆっくり両手を持ち上げた。
その小さな手の中に何か黒い影が見えていた。
影はゆらりと揺れると冷たく光るピストルの形になった。
その銃口から、真っ赤に燃えた銃弾が私に向かって飛んでくるのが、スローモーションのように見える。
夢の中からの拳銃の弾丸が、現実に人を殺すなんて事があり得るだろうか?
私は半分恐怖心、半分好奇心でそれを待ち受けていた。



おわり



言わずと知れた、もとツイッター小説です。

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by marinegumi | 2016-01-24 23:16 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

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偕成社のサイトで連載されている、高井信さんの「小学生のためのショートショート講座 第18回『このふたつには気をつけよう』」です。
イラストは、僕が描かせていただいています。


『小学生のためのショートショート講座』記事一覧
第18回『このふたつには気をつけよう

「夢オチ」「実はロボットでしたオチ」という、ショートショートのタブー?に、さらに「実は人間でしたオチ」を、これでもか~と入れたわけですね。
つまり、こういう物は書かない方がいいのではないかと言う物を徹底的にこれでもかと書くと言うのも、逆に有りかも知れないと言う事ですね。

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by marinegumi | 2016-01-24 00:19 | 写真や お絵かき | Comments(0)

名探偵失踪 (2枚)

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画像は雑貨通販サイト「shipton」さんでお借りしました。「おしゃれな真鍮ルーペ」


近頃、街では殺人事件が頻繁に起きていました。
それもみな警察の手に余る複雑怪奇な事件ばかりでした。

しかしその殺人事件の謎を解き、ことごとく犯人を特定してしまう天才的な名探偵が現れたのです。
今日も今日とて……

「犯人はお前だ!」
事件関係者が集められた部屋の中で名探偵は声を上げました。
指さされた男は顔色を変え、逃げ出そうとしましたが、その場に居合わせた警官によって取り押さえられました。
「いやあ、お見事です。あなたの名探偵ぶりは後世まで語り継がれることでしょうな」
でっぷりと太った警部が名探偵に握手を求めました。

その時、一人の少女が名探偵の前に歩み寄ります。
「犯人がわかっても死んでしまったパパは生き返らないわ!」
そう叫んで少女はその場に泣き崩れました。
「君はあの被害者の娘さんだね」
名探偵は優しく少女を抱き起します。
そして涙があふれたその瞳を見つめながら言いました。
「そうだね。私は少しも君の力になれなかったね。許しておくれ」

その日以来名探偵は姿を消しました。
探偵事務所にも明かりが点かず、ずっと鍵が掛かったままでした。
警部が何度も訪れましたが、ようとしてその行方は知れませんでした。

しかしその後、街では殺人事件が驚くほど少なくなりました。
喧嘩や強盗などによる単純な、突発的な殺人事件はあったものの、以前のような謎に満ちた警察の手に余る事件が全くなくなったのです。

人々はうわさをしました。
「あの名探偵が事件の起きる前に解決しているんだね」と。



おわり



きのう書いたツイッター小説を長くしてみました。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくれました。
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by marinegumi | 2016-01-08 17:13 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

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☆鶴の恩返し その1

ある雪の降る晩のことでした。
戸を叩く音がしたので男が出てみると、白い着物を着た美しい娘が立っていました。
「私の名前はつうと言います。道に迷っております。一晩泊めて下さいませんか?」
するとそれを見ていた女房がいきなり男の顔をこぶしで殴りました。
「あんたまた別の鶴を助けたね!このスケベおやじ!」
娘は呆気にとられて男を攻撃する鶴を見ていたと言います。



☆かさじぞう

「ただいま。傘が売れ残ってしまったので峠のお地蔵さんにみんなかぶせてあげたよ」
「まあ、まあ、それはよい事をしましたね」
「それで請求書を一番大きなお地蔵さんの前に置いてきたよ」
「まあ、まあ、それで?」
「金を払いに来なきゃ、預金でも差し押さえようかのう」
「ばちが当たっても知りませんよ」



☆一寸法師

「ちょっと、ちょっと、ちょっと法師さん」
「え?何ですか?(女子高生の三人組だ。なんかやな予感がする)僕は一寸法師だよ。これからお椀の船に乗って…」
「あんたの名前さ、スマホで調べると一寸(ちょっと)法師って出たのよね。つまり身長がちょっとしかないってこと?」
「いや一寸(いっすん)だから」
「え?ど、どゆこと?」
「あ~、説明がめんどくせ~」



☆浦島太郎

乙姫様は浦島太郎と別れるのがあまりにつらいので一緒に付いてきてしまいました。
太郎はあたりの様子を見渡し、驚きます。
「何という事だ。私の村はすっかり変り果て、知っている人が一人もいない。どうすればいいのだ」
太郎はしばらく呆然としていました。
「そうだ、この玉手箱を開けてみよう」
「そうするのが一番です」
「乙姫や。開けるからこっちにおいで。なんでそんな遠くに離れるんだ?」



☆さるかに合戦

カニ、栗、蜂、馬ふん、臼(うす)は力を合わせてサルをこらしめましたとさ。
めでたし、めでたし。

後日勝利を祝うために飲み会が開かれましたが、なぜか馬ふんだけが呼ばれませんでした。
「そりゃー僕は臭いかもしれないけれど、一緒に戦った仲間じゃないか!くそー、仕返ししてやる」
第二部の始まりです。



☆こぶとりじいさん

まあ、おじいさんたら。
きれいにこぶが取れたわね。
しかもお肌がピッカピカ。
そうなの?
鬼に取ってもらったの?
そこを紹介して頂戴。
しわを取ってもらいに行くからさ。



☆桃太郎

おばあさんは八百屋さんで六個入りパックの桃を二パック買ってきました。
おじいさんと二人で食べようと切ってみると、なんと中から小さな男の子が生まれたのです。
「おお、これは可愛い男の子じゃ」
おじいさんとおばあさんは大喜びです。
「桃太郎と名付けて大事に育てましょうね、おじいさん」
二つ目の桃を切ってみるとまたまた同じように男の子が生まれました。
「なんと、二人目も生まれたか。お前の名前は桃二郎だぞ」
そんな感じで、三つ目は桃三郎。
四つ目は桃四郎。
五つ目は桃五郎と名付けました。
そしてなんと六つ目の桃からは男の子と女の子の双子が生まれたのです。
さすがにげっそりしたおじいさんとおばあさんは、まだ開けてなかった二つ目の桃のパックを八百屋さんに返品に行きました。
ちゃんとレシートを持って。



☆ねずみの嫁入り

「ねえ、お父さん。そろそろ娘にもお婿(むこ)さんを見つけなくてはいけませんね」
「そうだな、うちの娘は世界一頭の良い男と結婚させたいものじゃの」
「一番賢いと言えばあなた、ある大学に在籍しているネズミがいると聞きましたよ」
「よし!そのネズミに会いに行って来る」

「おお。ここが早稲田大学理工学部と言うところか?おや。あそこにネズミがいるぞ。あれがうわさの・・・」
「あなたはどなたですか?」
「私は私の娘を世界で一番頭の良いネズミと結婚させようと思っているんです。大学にいるるネズミさんなら賢いだろうと思ってね」
「こんな所に来ちゃだめですよ。ああ~!ほら、捕まっちゃった」

「なんだ?薄汚いマウスだな。どのゲージから逃げ出したんだ?」



☆花咲か爺さん その1

「枯れ木に花を咲かせましょう」
そう言っておじいさんが灰をまいた時、風が吹いておばあさんにかかってしまいました。
「あー、どうせわたしゃ枯れ木だよ」
「違うんじゃよ婆さんや」
二人は老年離婚してしまいました。



☆花咲か爺さん その2

「枯れ木に花を咲かせましょう~」
そう言ってお爺さんが灰を勢いよくまいたとき、突風が吹きました。
そして、灰はそれをまいたお爺さんの顔に嫌と言うほどかかったのです。
「いててて……」
お爺さんの唇には赤いぶつぶつが。
「うわあ。熱の花(口唇ヘルペス)が咲いた」



☆舌切りすずめ

「お土産は、大きなつづらと小さなつづらと、どちらがいいですか?」
と、すずめたちは言いました。
「今度はひっからないよ、両方もらってくからね!運送屋さん、こっちだよー」
悪いおばあさんはスズメのお宿の扉を閉めました。
「焼鳥屋さんも仕事を始めておくれ」



☆鶴の恩返し その2

吹雪の夜に誰かが戸を叩く音が聞こえた。
「ここを開けてくださいな」
おじいさんとおばあさんが戸を開けると、そこには美しい一羽の鶴が立っていました。
「とうとう開けてしまったのですね」
鶴は悲しそうにそう言うと、遠くの空へ飛び去ってしまいました。
「今のはなんなんでしょうおじいさん?」
「昼間助けた鶴に似ていたようじゃが、はて?」




おわり



あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

大みそかにアップした「名作パロディー・西洋編」の続編です。
りんさんのブログ「りんのショートストーリー」でアップされた「名作パロディー」の作品のコメント欄に、僕も同じタイトルで書くのが恒例になってしまい、いつの間にかこんなに溜まっていました。
西洋編も日本編もごちゃまぜで書かれていたのを今回分けて、更にちょこちょこ手を入れて、しょーもないものは削除してアップしています。

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by marinegumi | 2016-01-01 10:40 | 掌編小説(新作) | Comments(5)