雨宿りの木 (3枚)

a0152009_1657108.jpg

学校帰り。
青空の下。
僕はビニール傘をステッキの様に持って、左右に揺らしながら歩いていた。
街を外れ、川に架かった橋を渡り、いつもの野原の中の道を歩いて行く。
女の人が怪訝そうな顔で僕を見送っていた。

やがて空に雲がかかり、間もなく雨が降り出した。
ビニール傘を開く。
雨は強くなりビニール傘の上を流れる。
しばらく歩くと小さな池のそばの一本の大きな木が見えてくる。
そしてその木の下には雨宿りをする映子ちゃんがいた。
「こんにちは」
僕が声をかけると映子ちゃんはにっこりとほほ笑む。
いつも胸がきゅんとするすてきな笑顔だ。
僕は今日、学校であった事をあれこれ映子ちゃんに話してあげる。
「へえ?そうなの」
「麻衣ちゃんが?」
「そんなのうそでしょ!」
映子ちゃんはそういう風に相槌を打ちながら楽しそうに聞いてくれる。
話し終わり、ふと沈黙が下りる。

僕はいつも迷っている。
映子ちゃんに告白するかどうかを。
こんなにも好きで好きでたまらない気持ちを打ち明けるかどうかを。
でも、いつも決心がつかないのだ。
映子ちゃんが僕の気持ちを受け入れてくれたら僕はどうなるのだろう?
君とずっと一緒にいられるのだろうか?
映子ちゃんは可愛かった。
まつ毛の一本一本さえ現実的に見えた。
幽霊だなんて信じられなかった。

あいつに振られただけで、雨の日にこの池に身を投げた映子ちゃん。
何でいつまでもここにいるんだい?
僕が会いに来るのを待っているの?
そして僕が告白するのを待っていてくれてるのかい?

木の下に幽霊が出ると言ううわさで、この辺りには誰も寄り付かない。
どんなに良いお天気の日でも年中雨が降っている不思議な場所。
毎日僕が学校に傘を持って来るのは映子ちゃんに会うためだ。

さよならを言って僕は歩き出した。
いつか映子ちゃんに告白する日が来るのだろうか?



おわり



この作品はりんさんのブログ「りんのショートストーリー」の作品「雨が嫌いになった日」のコメント欄に書いた僕のお話のアイデアを元にしてでっち上げた作品です。
こういうコメントをしたことさえ忘れていましたが、今日、ふと思い出してしまいました。
と言うか、長いコメントだったのでワードで下書きをした物が残ってたんですね。
それを見つけて、なんだこれはと思って。
それを元に一つ書いてみようと言う事になったわけです。

りんさんの「雨が嫌いになった日」は2013年6月の作品ですね。
そして、映子ちゃんはこの作品の登場人物と同じ名前です。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
by marinegumi | 2016-05-29 16:58 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

食べ物 (3枚)

a0152009_18443537.jpg

旅の途中だった。
ある村を通り過ぎようとしていた時に、もう食料品がない事に気がついた。
もうそろそろ昼になる頃で、急に空腹を感じた。
そこに何やら小さな食料品店らしい小屋が見えて来る。
店先に立つと一人の黒づくめの服を着た老婆が中に座っているのが見えた。
いくつかある台の上にはかごに盛られた卵ぐらいの大きさの白いものが並んでいる。
多い少ないはあるものの、どのかごもみんな同じものだった。
「これは何ですか?タマゴかな?」
そう声をかけるとそれまで影の様に身動きしなかった老婆はのそりと体を動かした。
「食べ物じゃよ」
「ええ、何という食べ物なんですか?」
老婆はまじまじと私の顔を見た。
そしてよそ者だと気がついて納得したのか、小さくうなづいた。
「食べ物じゃよ。そう。タマゴだと思って食べればそれはタマゴだし、肉だと思って食べればそれは肉なのじゃ」
「ええ?そんな食べ物があるんですか?」
「そうじゃよ。だからこの村の者はみんなこれを買って帰るのさ。畑を耕す必要も、狩に出かける必要もない」
「それじゃあ私もいただきます。これぐらいでいいかな」
私は10個ぐらいが盛られたかごを指さした。
老婆は皿から紙袋にそれを移し替えると私に差し出して言った。
「12ハンスじゃ。一回の食事に1個でいいよ」
食事10回分ならそれほど高くもない。

しばらく歩いて村はずれの川のほとりで私は座って食事をすることにした。
白い丸いものは触ると軟らかくて不思議な感触だった。
しっとりしているようで乾いているようで、潰れそうでいてしっかり弾力がある。
「食べる時はこれが食べたいものだと想像して食べるんじゃよ」
老婆の言葉を思い出していた。
それを口に入れた時、変な想像をしてしまった。
「し、しまった」
またたく間にひどい吐き気とめまいに襲われた。
そして意識が遠のいて行く。
私はそれを毒キノコだと想像してしまったのだ。




おわり




ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。



ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
by marinegumi | 2016-05-28 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

a0152009_23523367.jpg


偕成社のサイトで連載されている、高井信さんの「小学生のためのショートショート講座 第22回『プロットを作ろう(後編)』」です。
イラストは、僕が描かせていただいています。


『小学生のためのショートショート講座』記事一覧
第22回『プロットを作ろう(後編)』


「更新されました」
と言うよりも、「20日に更新されていました」と言う方が正しいですね。
ついつい記事を書くのを忘れることなく忘れてしまい、日にちが経ってしまいました。
まあ、いつかは記事を書こうとして先月分のを忘れていたと言う事もありましたがそれよりはましですね。

今回は前回のイラストとストーリーがつながっています。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
by marinegumi | 2016-05-28 00:01 | 写真や お絵かき | Comments(0)

写真は、フリー写真の「ぱくたそ」さんでお借りしました
a0152009_1838027.jpg

気がつくとぼくは暗い部屋に立っていた。
何となくの雰囲気と匂いで自分の部屋だと分かった。
ひょっとしてぼくは立ったまま眠っていたんだろうか?
でも、眠りから覚めたという感じはしない。
ただ、そう、気がついたとしか言いようがないんだ。

部屋は真っ暗ではない。
どこからともないほのかな光が部屋全体に満ちている感じだった。
ぼくはなんとなく壁に掛けてある大きな鏡の前まで歩いた。
この鏡はぼくのおばあちゃんが残したものだ。
床の上から2メートル近くも高さがある。
ちょうどこの部屋のドアぐらいの大きさだった。
そう、この部屋は前にはおばあちゃんが使っていた。
おばあちゃんが死んでから間もなくぼくの部屋になった。
家具もベッドも、すっかり入れ替えたけれど、この鏡だけはそのまま残っている。
夜中に目が覚めてトイレに行く時なんかは、必ずこの鏡の前を通る。
そしていつも暗い部屋にいる鏡の中のぼくと目が合うのだ。
なんだかその鏡の中のぼくは、ぼくとは違うもう一人のぼくのような気がした。
今にも、ぼくの動作に縛られず勝手に動き出すのではないかと不安混じりの不思議な気持ちになった。
でも、決してそれは怖いと言う感じではなかった。
薄暗い部屋の中にいる鏡の中のぼくが昼間のぼくとは違う存在のような気がしたのだ。

いつもするようにぼくは鏡の前に立ち、横目で鏡の中のぼくを見ようとした。
でもそこには誰も映っていなかったんだ。
ただ薄暗い部屋がぼうと映っているだけだった。
手を伸ばしてみた。
その伸ばした手も鏡に映る事もなく、鏡の表面に触りもしなかった。
勢い余ってぼくの体はするりと鏡の向こうにすり抜けてしまった。
振り返って手を伸ばすと冷たく硬いガラスの感触があった。
閉じ込められた?
一体どうやって鏡は扉を開き、また閉じてしまったんだろう?
鏡の外側の薄暗い僕の部屋が見える。
窓際に置かれたテーブルの上に見なれない物があった。
それは額に入ったぼくの写真らしかった。
その写真の前には、お皿に乗ったぼくの大好物のイチゴのショートケーキが見えた。



おわり



ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくださいました。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村
[PR]
by marinegumi | 2016-05-15 18:42 | 掌編小説(新作) | Comments(10)