人魚
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海なんて嫌いだった。
ボクは船になんて乗りたくなかった。
何だか胸騒ぎもしていたんだ。
なのに家族みんなで乗る事になっちゃった。
そしてそして、ほら案の定、心配した通り船が沈んでボクは海の中にいる。
気が付くと人魚になっていたんだ。
体はそのままだけど、足の方はもうお魚みたいにうろこに覆われてヒレが生えている。
男の子の人魚なんて聞いたこともない。
そんなの、いてもいいのかもわからない。
でもでも、独りぼっちは嫌だ。
だから嵐の日にはこうやって、海の底の方から上を見上げ、船が沈むのを待っている。
可愛い女の子が乗った船が沈まないかと。




空気清浄機
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高原のしゃれたホテル。
案内された部屋に落ち着き、ベッドに座ってため息をついた。
部屋をぐるりと見回す。
空気清浄機があった。
「こんなに空気のきれいな所に空気清浄機なんているのかな?」
思わずそんな独り言が出た。
そうか、たばこを吸う人のためかもね。
そう思いながらどこで死のうかと考え始めた。
睡眠薬はたっぷり用意している。
あとは場所を決めるだけだ。
この部屋で死ぬと迷惑がかかると思うので最初からそれはしないことにしていた。
そう、わたしは失恋をして自殺をするためにここにやって来たんだ。

その時、空気清浄機が動いた。
自動運転?
でも誰もたばこを吸っていないのに?

自殺をしたい強い思いがうそのように消えて行くのがわかった。



アブク
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雨の音を聞いていた。
窓辺に椅子を置いて窓枠に頬杖ついて雨が降るのを長い時間見ていた。
庭の木々や草花が風ではなく雨に揺られていた。

いつの間にか眠ってしまったようだった。
ふと目覚めると窓の外はにはまだ雨が降り続いていて、薄暗くなっていた。
暗く青く、まるで海の底の様な庭の色。
部屋の空気はしっとりと潤って水の中にいるようだった。
あくびをすると、ぷくんとアブクが出たような気がした




靴屋の小人
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この家には小人が棲んでいると言う。
それもすごく沢山の小人たちが。
数年前に引っ越してきた古い古い洋館作りの田舎の家。
引っ越し屋さんだったか、不動産屋さんだったか、近所の人だったか。
誰かからそんな噂を聞いたような気もするし聞かないような気もする。
記憶がひどく曖昧だ。
「でも一度も見かけたことがないよね。小人」
思わず独り言が出た。
「え?何がですか」
テーブルの向かいの妻に聞こえてしまったらしい。
「いや、この家に小人がたくさん棲んでいると言う噂を聞いたような気がしてさ。でも一度も見かけたことなんてないだろ?」
「そうですか?いつも見ているはずですけどね」
「え?どういう事?」
その時、笑顔の妻の顔がぞわぞわと崩れたような気がした。
そして一瞬見えたのだ。
妻の体が小さな小さなミクロの大きさの無数の小人が組み合わさって出来ているのが。
ほんの一瞬だったので、あとで思い出してもそれが本当だったのかどうか、まったく自信がなかった。
そのあと、いくら目を凝らしてもいつもの色白のすべすべの肌の妻がそこにいたのだ。




窓の中
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公園の横を通り、りょう君の家の前。
窓から家の中をのぞくと部屋の中では青いお魚が泳いでいた。
もう少し歩くと、なほちゃんの家だ。
窓の中では赤いお魚が泳いでいた。
そうなんだ。
幼稚園のお友達はみんなお魚になっちゃったんだ。
それもみんなそれぞれの色のきれいなかわいらしいお魚だ。
みみちゃんちの窓をのぞくと、オレンジ色のお魚がいた。
こう君の家には緑色のお魚。
黄色いお魚になったわたしは水に沈んだ街を泳いで行く。



おわり



みなさんいかがお過ごしでしょうか?
僕は例によって仕事の忙しいくそ暑い夏のため創作休止に追い込まれています。
それでもまあ、あまり何も書かないのも淋しいので、最近のツイッター小説を元に5本書いてみました。
これは元のツイッター小説をなるべくそのままの形で、書き足りなかったところを補う程度にしたもので、「ツイッター小説プラス」と呼んでいます。

まだまだ暑い日が続きますので体に気を付けてお過ごしください。

ではでは。

イラストは無料イラストのイラストACさんでお借りしました。

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by marinegumi | 2016-07-31 15:25 | ツイッター小説プラス | Comments(2)

Web光文社文庫 2作品目

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Web光文社文庫「SS(ショートショート)スタジアム」で僕の作品を掲載していただいています。

「ぼくにはかわいい妹がいた」という作品です。
「おでかけ」に続いて2作品目になります。
ジャンルとしてはどちらもSFになりますね。
なんというか、お涙ちょうだいSF?リリカルSF?
そんな感じ。
おひまなときに読んでやってください。

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by marinegumi | 2016-07-11 18:42 | わたくし事 | Comments(0)