まりん組・図書係 marinegumi.exblog.jp

海野久実が掌編小説やら短編小説を書いています。タイトルの後に原稿用紙換算の(枚数)があるのが小説です。


by marinegumi
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カキーン (2枚)

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少年は足を骨折して病院のベッドにいる。
静かな寝息を立てて眠っている。
その耳元に……

カキーン
と澄んだ音がする。
秋の青空を二つに切り裂くように白いボールが空を横切る。
少年は走る。
懸命にベースを蹴り次の塁をめざす。
そこにたどり着かないうちにまた打球の音。
カキーン
少年はまたもとの位置から走り出す。
バットが転がる音を聞きながら。
懸命に走り、ベースを蹴る。
カキーン
また澄んだ音が青空に響く。
その音のたびに少年の位置はリセットされる。
バッターボックスから駆け出す自分を見つける。
今度は一塁ベースを蹴る前に音が聞こえた。
カキーン
また少年は全速で走りはじめる。
砂埃を上げて。
カキーン
何度それを繰り返しても少年は不思議に思っていない。
カキーン
ただ一生懸命に、全速力で走りだす。

少年の学校の校庭は林の向こうで、病院からは見えない。
けれど距離は近いので野球部の練習の打球の音はよく聞こえた。
カキーン
カキーン
ふたつの音が重なった時、少年はどんな夢を見るのだろう。



おわり



初めての手術なので、不安です。
でも、病院へ行ってると、腕や足を骨折した少年少女の姿を見ます。
恐がってる場合じゃないよな~

前の記事で「しばらく更新できませんが」と言いながらの更新です(笑)
いよいよ明日から入院です。
この数日、仕事は出来ないけれど、仕事場に来て電話番をしています。
時間があるので書いてみました。

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by marinegumi | 2016-09-26 11:57 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

怪我 (3枚)

大変なことに、屋根からうっかり落ちて、怪我をしてしまいました。
右肩の筋が切れているらしくて腕が上がりません。
手術をしないといけないと言う事で、二か月ほど入院になります。
恐らく棘上筋(きょくじょうきん)というやつらしいです。
そんなわけでしばらく更新できませんが、皆さんお元気で。
病院にはタブレットを持って行くので、手術直後は無理としても、コメント返しやツイッターぐらいは出来るでしょう。
入院は9月27日からです。

そんなわけで、『怪我』にちなんだショートストーリーをいくつか。(お気楽か?)





ドラゴン
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「これは『輸血』というものをしないと助からないな」
物知りの芋虫の病院長が言った。
その異世界から迷い込んで来た少女は崖から落ちて大怪我をしたのだ。
意識はあるけれど出血がひどかった。
「この世界には人間はいない。輸血に似た医療技術らしいもがあるにはあるが、血液が手に入らないからのう」
「私が人間世界に運びます」
少女をこの病院へ連れてきたドラゴンがそう言った。
「そんなことをしてみろ。お前は元の姿を保てなくなるぞ。そして二度とこの世界に帰って来ることも出来ん」
ドラゴンは強いまなざしで、きっぱりと言った。
「それでもかまいません!」

救急病院の玄関前で瀕死の少女が見つかった。
発見した病院のスタッフがすぐに院内に運び込み、手術が始まろうとしている。
近くの草むらで小さなトカゲがそれをずっと見守っていた。




ミツバチ
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わたしが大怪我で入院した時の事なんだけどさ。
担当のお医者さんがすげ~甘党でさ。
同じ冷蔵庫に入れていたグレープジュースと輸血用血液を間違って輸血しちゃったんだ。
まあ、それで命が助かっちゃったわたしもわたしだけど、間違う方もどうかしてるよね。
ま、それはそれでよかったんだけどさ。
それからと言うものわたしが汗をかくといい匂いがするんだ。
あま~い、いい匂いがね。
蚊は寄って来なくなってよかったんだけど、代わりに蜜蜂が来るようになっちゃった。




ガラス
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お城でまた舞踏会が開かれる。
城下のすべての家にお知らせが配られた。
「先週に引き続きお城で舞踏会を開催する。前回の舞踏会に参加した娘は全員その時と同じ服装、同じ靴を身に着けて参加するように」
いくら探しても、お城に残された片方のガラスの靴の持ち主がどうしても見つからなかったのです。

シンデレラは片方だけガラスの靴を履き、片方は裸足でお城に向かいました。
今度は魔法使いが来てくれなかったので長い道のりを歩いてお城を目指しました。
そして、道の途中に落ちていたガラスの破片で、裸足の左足を切ってしまい、とうとうお城にたどり着けませんでした。




おわり




いやあ、3千本以上のツイッター小説を書いていると、「怪我」で検索するだけで10本以上も出てきました。
で、そのうち3本を長くしてみました。

イラストは「無料イラストのAC」さんでお借りしました。

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by marinegumi | 2016-09-23 14:31 | ツイッター小説プラス | Comments(8)

夏の時計 (11枚)

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  かいすいよくも、キャンプも、花火もみんなあきてしまった。
  夕立やカミナリの音、どこまでも青い空、大きなにゅうどう雲、セミの声。
  そんな夏らしいものはもうたくさんだった。
  たいくつしのぎに始めたしゅくだいも、もうすっかりおわってしまった。
  なんどもなんども見なおしたので答えはカンペキだ。
  絵日記はちゃんときれいにかきなおした。
  夏の思い出であふれかえっている。

  夏休みはもういい。
  新学期よ、どうかはじまってくれ。


長い長い特別な夏休みが始まるその日、いつものように準(じゅん)の心はときめいていた。
これでもう永遠に学校なんかに来なくてもいいような気がした。
そう、一か月以上の休みなんて小学校4年生の少年にとって、ほぼ永遠に等しいのかもしれない。
準は学校の校門を出て後ろを振り向くこともなく下り坂を走って駆け抜けた。
坂の下の広い道に出る時には足に急ブレーキをかけた。
早足で歩く帰り道の通りの両側にはいくつかの商店が点在している。
電気店や、駄菓子屋、文房具店など、みんなおなじみの店だ。
淳の足が止まったのは小さな時計店の前だった。
毎日通っていた道のはずなのに初めて見る店だったけれど、新しく出来たにしてはとても古びた店構えをしている。
木で作られたガラスのはめ込まれた引き戸の向こうは暗かった。
その時計店の小さなショーウインドウの中に見なれない置時計があった。
むっくりと丸いその時計の色は緑がかった青色をしている。
微妙な楕円形の文字盤。
はめ込まれた文字盤のガラスも青みがかっていた。
緑色のデザインされた針は夏の若葉を思わせた。
秒針は滑らかに動き、夏の爽やかな風を思い起こさせた。
「夏の時計だ!」
準は何故かそう思った。
その時計をどうしても手に入れたいと思った。
家に帰ると急いで二階の自分の部屋に駆け上がり、貯金箱を抱えて再び家を飛び出した。
「準くんお帰りなさい」
母親がそう声をかけた時にはもう姿は見えなかった。
人気のない路地の奥で貯金箱を壊し、お金を取り出すと陶器のそれを近くにあったゴミ集積場所に置いた。

時計店の主人は分厚いレンズのメガネをかけたエプロン姿の老人だった。
恐る恐る準が店に入って行くと店の隅で机の前に座って何やら作業をしていたらしい老店主は顔を上げ、メガネをずり下げ、裸眼で彼を見た。
「いらっしゃい、ぼうや」
そう声をかけると老人は準が口を開くのを待った。
「あの。時計が欲しいんです。あの緑色の……」
「ああ、夏の時計だね」
本当に「夏の時計」と言う名前がついているのかと準は思った。
偶然にその時計の値段は、準の貯金箱の中身と同じ金額だった。
店主は奥の棚から緑色の箱を取り出して来て、ショーウインドウのその時計を入れてくれた。
箱にはアルファベットと数字の後に(夏)と文字があった。

準は自分の部屋の机の上にその時計を置いた。
丸っこいその時計を手で触ると不思議な感触がした。
粗悪なプラスチックではなく、しっとりと手になじむ気がした。
音もなく滑らかに動く秒針。
まるで生き物のように息づいている感じがある。
夏の若葉のみずみずしさ。
強い日差しの熱も感じ、手をはなすと爽やかな風を感じた。
この時計は夏の時間を刻んでいる。
それは準が最初にその時計を見た瞬間に思ったことだった。

麦わら帽子の香ばしさ。
夕立の爽快感。
強い日差しを避けた木陰のさわやかさ。
友達の声や笑顔。
セミ取りをする木立の下の期待感。
カブトムシを見つけた時の狂喜乱舞。
浮き輪の中で海の上を漂っている浮遊感。
そんなものを残して、夏の時間は過ぎて行った。
夏の時計は正確に時を刻んでいた。

そしてある日気がつく。
宿題がまだたくさん残っていることに。
絵日記は日を追うごとに簡単な絵になり最後の方はもう適当に思いついたことを描いた。
科学研究は図書館で見た本の、どこかの誰かさんの丸写し。
国語や算数のプリントの半分ぐらいはまだ手つかずだった。
宿題をいやいややっている机の上で、夏の時計は時を刻んでいた。
その時計の色の変化に準はまだ気がついていなかった。
しっとりとした若葉の色だったそれは夏休みの中ごろには鮮やかな深い緑に変わり、間もなく9月を迎える今ではやや黄色味がかっているのだった。

夏休み最後の一日。
窓から見える青空には遠くうろこ雲が浮かんでいた。
半ばやけくそで宿題を消化していた準はとうとう感情を爆発させた。
「もういやだ~!」
と叫ぶなり、机の上にあったものを手で払ったのだ。
部屋の隅まで飛んで行ったノートやプリント。
筆箱の中身はあちこちに散らばっている。
大声を出して少しすっきりしたのか、準はため息をつくと散らばったものを集め始めた。集めて行くうちにあの夏の時計も一緒に払い落としていたのに気がついた。
慌てて床の上から拾い上げたそれを手に取った時、わずかにへこんでいるのを準は見つけた。
そして見ているうちにそのへこみが直るのを不思議に思いながら見ていた。
色は買った時のままの若葉の色に戻っていた。
夏の初めと終わりの変化に気がついてなかった準は当然それにも気がつくはずもなかった。

いやいややる宿題ははかどるはずもなかった。
途中で飽きてしまい、机に突っ伏したり、ベッドに寝転んでマンガ本を読んだりしながらも、また机に向かい、適当に片付けて行った。
何枚かは白紙のままにしたり、いい加減に文字を埋めて行った。
「こんなじゃ、先生におこられちゃうかもな~」
などと呟きながら。

あくる日、準が目覚めるとあたりはやけに静かだった。
準は無表情で、何かに操られているようにベッドから起き上がった。
カーテンを開けると街の家々の向こうに大きな入道雲がわいているのが見えた。
準は出来そこないの宿題を詰め込んだ手提げバッグを持つとふらふらと家を出た。
人気がなく、車も走っていない街を不思議にも思わずに通り抜けて学校にやって来た。
準が学校の校門の前に立った時、彼の後ろで町は元通りの活気を取り戻したが、気がついていなかった。
車の往来が戻り、人々の姿も復活した。
木々のざわめきや小鳥の声も元通りだった。
そして準もその表情を取り戻していた。
校門の門扉はしっかり閉じていて職員室にだけに灯りが点いていた。
先生は来ているようだけれどけれど子供たちの姿はなかった。
準は気がついた。
今はまた夏休みが始まったばかりなんだと。
待ちに待った夏休みの始まりに心をときめかせたたくさんの友達の、そのうきうきした気持ちがまだ校庭のあちこちに残っている。
そんな気配がある夏休み最初の一日だった。

準は坂道を駆け下りるとあの時計店の前にやって来た。
建物はそこにあったけれどガラスのはまった木戸の向こうには白いカーテンが引かれ、ショーウインドウには何もなくホコリが降り積もっているばかりだった。
時計店の看板があったはずの壁にはわずかに白くその跡が残っているばかりだった。

自分の部屋に帰ってくると机の上の時計を手に取った。
両手でそれを包むとわずかな振動を感じた。
そしてなんとなくしんどそうな、かすかなノイズを。
「時計が壊れてしまった」
何故かそうなんだと分かった。
「直してくれる時計屋さんはもういない」

  海水浴も、キャンプも、花火もみんな飽きてしまった。
  夕立やカミナリの音、どこまでも青い空、大きな入道雲、セミの声。
  そんな夏らしい物はもうたくさんだった。
  退屈しのぎに始めた宿題も、もうすっかり終わってしまった。
  何度も何度も見直したので答えは完ぺきだ。
  絵日記はちゃんときれいに描き直した。
  夏の思い出であふれ返っている。

  夏休みはもういい。
  新学期よ、どうか始まってくれ。




おわり




仕事の合間にちょこちょこ書いて、ひとまず出来上がり。

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by marinegumi | 2016-09-19 13:49 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

ドーナツ (1枚半)

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僕らの世界なんて、そうだなあ、ドーナツの穴みたいなもんさ。
みんな、ドーナツの穴の中に暮らしてる。
僕らの住んでいるこの空間を宇宙と言うドーナツが取り巻いている。
ところがこのドーナツを食べるやつがいるんだなあ。
食い意地の張ったやつだけどあまりガツガツはしていない。
静かに静かに喰い進むんだよね。
僕らは宇宙がいつの間にか、どんどんかじられて無くなって行ってるのにちっとも気がつかないんだよね。
その中の空間だけが自分たちの世界だからその外の事には関心がないからさ。
僕らの宇宙がそうやって喰い滅ぼされて行ってるとしても、まだ穴は確固として残っているので安心してるんだね。
気がついた時には宇宙はほとんど残っていない。
僕らの世界の外側にごくわずかに、薄っぺらになっちゃった宇宙があるだけさ。
最後の最後にわずかに残ったその宇宙は、気がついた時には一瞬で消えちゃうんだ。
そ。
まるでマジックショーの出し物みたいにね。
ただ重要なのは、宇宙が消えるときに僕らの世界も一緒に消えちゃうと言う事なんだ。



ほらね。
































おわり




連日の更新ですね。
長くなりそうな作品はまだ完成していません。
書きかけの小説ばかり入れているフォルダーを見ていると、完成した作品が。
あれ?
これはまだブログにアップしてなかったかな?
ちょっと調べると、まだみたいだったので上げておきます。

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by marinegumi | 2016-09-13 18:37 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

夢の果実 (1枚半)

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あなたが夢を見る時。
その夢のどこかにあなたが見ている夢を果実としてつける夢の成る木があります。
夢に見る街角の思いがけない路地の突き当り。
それとも夢であなたが迷い込んだ森の奥。
それともひょっとして夢の中のあなたの家の庭の真ん中にあるかもしれません。

その夢の成る木はあなたが見つけた時からあなたの見ていた夢の果実をはぐくみます。
その夢の成る木の果実はやがて熟して落ちると、あなたの見た夢をふたたび再現するのです。
その夢は夢の成る木が夢の果実をつけると言う夢です。
その夢の中でまた夢の成る木は夢の果実をつけます。
そしてまたその果実は熟して落ち、夢を再現します。
くりかえし、くりかえし、夢のまた夢またその夢の果実。

そう言う風にこの夢を見はじめると終わりのない夢の連鎖にあなたは陥ります。
そしてもうあなたは目覚めることはないのです。



おわり



しばらく更新していないので、なんか書いてみようと思って、書きかけるとどんどん長くなってしまってまだまだ終わりません。
それじゃあちょこっと短いのを上げとこうかと言うわけで、小説とも散文詩ともつかない物を書いてみました。

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by marinegumi | 2016-09-12 18:32 | 掌編小説(新作) | Comments(0)