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傑作小説 (2枚)

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この物語は面白いと思った。
自分の作品ながらこれまで俺が読んだ、プロのどんな小説よりも面白いと言うことに自信があった。
たぶんどんな出版社へ持っていっても必ず採用されると思う。
いや、絶対に採用される。
されない訳がない。
そして出版されると、超ベストセラーを記録するのは間違いないはずだ。

この作品を編集部にどうやって届ければいいんだろう。
郵送か?
いやいや、時々郵便事故があるじゃないか。
宅配便だってそうだ。
あんなにものすごい数の荷物を仕分けている段階でいくらかは行方不明になったとしても不思議ではない。
そうだ、この間なんか郵便配達のバイクが止まっているのを見た。
郵便物をある店に配達員が持って入っている間、カバンの中の郵便物は無防備なのだ。
おれがすっと抜いても気が付かないだろうと思った。
それじゃあパソコンからメールで送るか?
しかし俺はそういうものも信用していない。
原稿はパソコンで書くが、も一つパソコン自体に詳しくないのだ。
まあ、メールに添付して送るぐらいはちゃんと手順は分かる。
送ったことがないわけじゃない。
送ったという実感がないので、本当に相手に届いているかどうかが心配なのだ。
できればメールなんかを使いたくない。
それじゃあ直接編集部に持って行くか。
ここからなら候補の出版社へは電車で30分、地下鉄に乗り換えて20分と言うところだろう。
まてよ。
最近、電車の事故がよくあるのを思い出してしまった。
そんなに重大な事故は起こっていないものの俺が乗っている時に限って起きないとも限らない。
仮に事故が起きなくても電車を降りて駅の階段で足を滑らせて頭を打って、なんてこともあるかもしれないし、出版社へ行くまでに交通事故というのもある。
いやいやそれなら駅に行くまでに家を出た途端に車に撥ねられる事もないこともない。
そんなことを言ったら、寝ている間にこのアパートが火事になって原稿もろとも焼けてしまうなんてことにもなりかねないし、ああもう、どうすればいいんだ。
 
心配で心配で書き始めることも出来ない。
 
 
 
 
おわり
 
 
 
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by marinegumi | 2017-01-17 19:05 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

かくれんぼ (3枚)

あけましておめでとうございます。
お正月にちなんだお話を一つ。


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お正月に田舎のおじいちゃんちでかくれんぼをした。
わたしがたぶん三歳ぐらいの頃だった。
親戚がたくさん集まっていて、知らない子供たちもいっぱいいた。
でもみんなお兄ちゃんやお姉ちゃんばっかりだったと思う。
わたしが一番小さかったと。

遊び終わって夕食の時、子供たちがみんな首をひねりながら話をしていた。
遊んでいた間は気が付かなかったのに思い返すと一人見覚えのない子供が紛れていたと言う。
みんながそれぞれに、自分の知らない親戚の子供だと思っていたらしく、夕食の時にその姿がないので変だと思い始めたらしい。
何年か後に母親がその時の話をしてくれた事があるのでなんとなくわたしの記憶に残っているのだろう。
その子のことを聞かれて、わたしも知らない子だったと返事をしたんだとか。
今、思い出してもおぼろげで、そんなことがあったかなあ、という程度だ。
でも、話をしている時の子供たちのその真剣な表情だけははっきり記憶にある。

そして大人になった今。
久しぶりにその田舎の家に行く機会があった。
おじさんの娘さんが結婚をすると言うので主人と一緒に娘の美里を連れてお祝いに行った。
結婚式は二人だけで海外であげるらしく親戚だけのお祝いの席だ。。
お爺さんはとうの昔になくなり、あのかくれんぼをした家にはそのおじさん夫婦が住んでいる。
昔のまま、チャイムもついてない玄関の戸を開けて声をかけた。
「こんにちは。お邪魔します」
そこにいたのは、いとこの一人の亮介さんだった。
彼は私達を見て何やら落ち着かない素振りを見せた。
「まあ、みんな座敷におるから入ってきいや」
そう言うと駆け足で先に行ってしまった。
座敷机の周りにはなつかしい顔が並んでいた。
その中の何人かが目を丸くしてわたし達を見た。
「こ、この子は由紀ちゃんのこどもさん?」
「そうだよ。美里です。五歳になるんだ。はじめましてだったよね」
「んにゃ。初めましてじゃないど。俺は子供の頃さ、この子と遊んだの、覚えとる」
「そうだそうだ、この子だった」
「あの時の誰も知らんかったあの子だ」
みんな口々にそう言った。
「そんなわけないでしょ? ただ似てるだけでしょ。わたしはあの時のことあんまり覚えてないけどさ」
わたしは少しうろたえていた。
「いんや。この子に間違いないさ」
と、亮介さんは言いきった。
「いやだなあもう。変なことばっかり言って。ねえ、美里ちゃん。このおじさんとおばさんたちと昔、遊んだなんてねえ」
美里は思い切り笑顔で答えた。
「おぼえてるよ。かくれんぼ」




おわり




正月の一時帰宅から病院へ帰ってきました。
消灯(21時)までにアップしようと猛スピードで書き上げました。
まあ、よくあるパターンのお話ですが1時間ほどで書いたにしてはまあまあかな?
だめ?

今年もよろしくお願いします。

イラストはかわいいフリー素材集「いらすとや」さんでお借りしました。

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by marinegumi | 2017-01-03 20:53 | 掌編小説(新作) | Comments(2)