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本を作った (2枚)

本を作った (2枚)_a0152009_1842521.jpg

とても面白いお話を書いたのでみんなに読んでもらいたくなった。
プリンターで印刷をして綴じると、表紙を付けてていねいに製本した。
ハードカバーのしっかりした本が出来上がった。
ちゃんと、しおりひもまで付けた。
そしてイラストとタイトルを描いたカバーをかけると立派な一冊の本になった。

ぼくは廊下から大きな鏡を部屋に持って入った。
そして部屋にあった鏡と向い合せに置くと、出来上がった本を持ってその鏡と鏡の間に入る。
すると、ぼくの前にも後ろにも、たくさんの本を持ったぼくが現れる。
手に持った本を差し上げるとたくさんの僕が本を差し上げた。
ぼくは目を閉じ、その鏡に映った本のことを強く念じた。

ぼくが鏡の間から出ると、しばらく「どさどさ、どさ」と言う音がしていた。
鏡をのけるとそこには何百冊と言うぼくが作ったのと同じ本が出来上がっていた。

ぼくはわくわくしていた。
あした、これを街の本屋さんへ持って行こう。
本屋さんはみんな仲良しだからぼくの本も置いてくれるに違いない。

それはとてもうれしかったんだけど一つ困ったことがある。
いったいどうしたらいいんだろう、何百人にも増えてしまったぼくを。



おわり



過去に書いたツイッター小説をワードにコピべしてまとめています。
その中から面白そうなのをごそごそ探し出してきては長くしてショートショートにすると言うのがこの頃のパターンですね。

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# by marinegumi | 2014-04-12 18:09 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

こぼかたさん頑張る (4枚)

こぼかたさん頑張る (4枚)_a0152009_1542865.jpg

その1

こぼかたさんは無事に記者会見を終えた。
自分の非は素直に認め、深々と頭を下げて謝罪をした上で言いたいことをちゃんと説明した。
その健気さと、時折涙を見せる頼りなげな表情にテレビ中継を見て心打たれた男性ファンが激増したことだろう。

何百人と言う報道陣がすべて撤収したところに再びこぼかたさんが現れた。
ホテルの従業員によって片付けの真っ最中の会場に入って唖然としている。
従業員の一人に声をかけた。
「あの。記者会見は中止になったのですか?」
振り返った従業員はそれがこぼかたさんだったので意外な顔をした。
「あ、いえ、中止だなんて。ちゃんと記者会見は終わったじゃないですか? こぼかたさん、立派でしたよ」と満面の笑顔になった。
「ひょっとしてこぼかたさん、記者会見の記憶がないとか? 相当お疲れのように見えましたけれど」
「ああ、そうなんだ。あの子がやってくれたんだわ」
そう言うとこぼかたさんはその場に崩れるように倒れた。

その後判明したところによると、こぼかたさんは交通事故による道路の渋滞で車が遅々として進まず、大幅に記者会見に遅れてしまったらしい。
そして、彼女の代わりに記者会見をこなしたのはSTAP細胞によって作成されたこぼかたさんの複製だったのだ。
なんとSTAP細胞はそこまで大幅に進歩していたのだった。



その2

iPS細胞やSTAP細胞、ES細胞など、さまざまな万能細胞が実用化され、医療現場ではなくてはならないものになっていた。
しかしある年を境にして万能細胞の暴走と呼んでもいい症例が頻発し出したのだ。
最初の報告例としては、ある男性が万能細胞によって事故で失った右腕を取り戻したが、その再生された部分からもう一本の腕が生えて来たのだ。
腕は完璧なもので、それぞれ思うように動かせた。
便利と言えば便利だったがその見かけのグロテスクさに切除手術をしたと言う。
またある女性は胃がんによって切除した胃を万能細胞で再生したのだが、お腹が張ると言うので検査をすると、いつの間にか胃が二つに増えていたのだった。
こういう症例が日を追うごとに増えて行った。
テレビや新聞雑誌のマスコミは「万能細胞の暴走始まる」「神からの警告」などと言うタイトルで特集を組んだ。

そんな中、こぼかたさんの記者会見がテレビで放映されていた。
「これが新しく培養した細胞の写真です」
スクリーンにパワーポイントの画像が映し出されている。
その細胞は赤い色をしていた。
「それは新しい万能細胞ですか? 今、問題になっている暴走が起きないように改良された万能細胞だとか?」
「いえ、そうではありません。これはあらゆる万能細胞と同時に使用して、万能細胞の暴走を食い止めるものです。名前はSTOP細胞と言います」



おわり


「こぼかたさん」で検索して来て下さる皆さん、「小保方(おぼかた)さん」を「こぼかたさん」にしたのはこの作品がフィクションだと言うことをはっきりさせるためです。
「小保方」は「こぼかた」ではなく「おぼかた」ですからね。
ちなみに「ソメイヨシノ」も、おぼかたさん関連の創作です。
合わせて読んでください。


またもや時事ネタになっちゃいますね。
現実のパロディーですね。
世の多くの男性と同じく(?)好意的な目線で書かせていただきました。

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# by marinegumi | 2014-04-10 15:44 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

ソメイヨシノ (4枚)

ソメイヨシノ (4枚)_a0152009_22414562.jpg

彼女は実に長い時間、何度も何度もプレパラートを替え、顕微鏡で観察していた。
息を止めてじっと数十秒。
そして小さくため息をつき、ふと視線を上げる。
そこには壁に飾られた桜の花の写真があった。
ま正面の写真の木は、まるで雲海のように咲き誇る満開の桜だった。
研究室には他にも写真はある。
可憐な花のクローズアップの写真。
色の濃い蕾(つぼみ)の写真。
木漏れ日が美しい葉桜の写真。
その全てが桜、ソメイヨシノの写真だった。
ぐるりと見回してまた正面の写真を見ると、少しかすんで見えた。
目が疲れているのだと自覚していた。
椅子の背もたれに体重を預け、腕組みをして目を閉じる。
目を閉じて数秒後、彼女の後ろで音にならないほどかすかな音が聞こえた気がした。
ひそやかな、空気をわずかに震わせる、ささやくような音。
彼女はゆっくり後ろを振り返った。
そこには高さ1メートルほどの桜の木が植物育成用のLEDライトに照らされて立っていた。
土を入れた大きなコンテナに桜の木は十数本植えられていたが、あるものは枯れ、あるものは葉をつけただけだったりするが、そのうち一本だけがわずかに数個の蕾を付けていた。
そしてその蕾のうちの一つが奇跡の様に開いていたのだ。
彼女は立ちあがってその花に顔を近づけた。
「さっきの音はあなただったのね」
花に手を伸ばした彼女の手はわずかに震えていた。
その手は花には触れずにしばらく愛おしく花を包んでいた。
「やっと咲いたのね」
80年ほど前からソメイヨシノの伝染病が猛烈な勢いで広まり、食い止めるために多くの木が伐採された。
しかし効果は全くなく、またたく間にソメイヨシノは全滅してしまった。
数年遅れてアメリカや他の国のソメイヨシノも同じ運命をたどった。
その伝染病はまた、突然変異を繰り返し、ジワリジワリと他の木々にも魔手を伸ばし、全国の山々は茶色く変色して行くのに任せた。

ある農業施設に何十年も冷凍保存されていたソメイヨシノの苗木があると聞いて彼女たちのチームはそれをもらい受けたのだがすでに冷凍庫は故障して久しく苗木は腐蝕してしまっていた。
それでも彼女は諦めなかった。
腐った苗木からわずかに生き残っている細胞を取り出して培養を始めた。
彼女のチームが桜の復活を目指して研究をしていると聞いた人々は誰もが笑い飛ばした。
誰もがそれは無理だと口をそろえた。

それがやっと今、小さな木に成長して十数本のうちのただ一本が育ち、葉をつけ、葉を散らし、蕾をつけ、ついに一輪の花が開いたのだ。
彼女の目はその一輪の桜の花の向こうに満開の桜の木を見ていた。
雲海のようにうねる桜並木を見ていた。
「この木はきっとどんな伝染病にも負けない強い桜になるわ」
彼女は自分が着ているおばあちゃんからもらった割烹着を見た。
研究室では白衣代わりに着ているものだ。
「おばあちゃん。わたし頑張ったわよ。おばあちゃんみたいに」




おわり




昨日書いた三本のツイッター小説のうちの一本を長くしてみました。
珍しく時事ネタだったりして。

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# by marinegumi | 2014-04-05 22:44 | 掌編小説(新作) | Comments(6)

機械の心臓 (2枚)

画像は宮永咲メイド服バージョンのフィギュアです機械の心臓 (2枚)_a0152009_14282985.jpg

働き始めてまだ一年目のメイドのミミはとても可愛く、しかもよく気の付く娘だった。
そして心底、私のことを心にかけてくれているのがよく解った。
しかし、彼女も解雇することにした。
僅かに心残りではあったけれど、どうしようもなかったのだ。
彼女よりずっと年上の古株のメイドも三人同時にやめてもらうことにした。
そう、私のわがままだった。
「それでは長い間お世話になりました」
メイドたちはこの屋敷を去る時に無表情で深々とお辞儀をして出て行った。
しかしミミだけは違っていた。
言葉もなく、ただ目を潤ませていた。
何度も私を振り返りながら屋敷を後にした。

三日後には新しいメイドがやって来た。
最新型のメイドロボットが二体だ。
一体はスタンダードな作りだが、もう一体はその顔をミミとそっくりに作ってもらった。
そう、私にはまだミミに対する思いがわずかに残っているのかもしれない。
メイドロボットたちはよく気が付き、よく働いた。
無表情で、しゃべる語彙も少なかったけれどそれは今の私には心地が良かった。
交通事故で車両に体が押しつぶされ瀕死の重傷を負った私の体はその殆どが医療用機械体躯に交換されていた。
元のままなのは脳と顔の一部だけだった。
ほぼロボットだなと考える事がある。
でも、別にそれが悲しいとも、嫌だとも思わない。
ただものの考え方が変わってしまったように思う。
人間相手では会話が思うように行かなくなってしまった。
ぎくしゃくして脳がストレスを感じるのだ。
ロボットのメイドたちといるとそんなことはない。
至って快適なのだ。
ただ、たまに、あの可愛かったミミの笑顔を思い出すことがある。
そんな時は決まって機械の心臓が、チクリとわずかに痛むような気がするのだ。



おわり



ここのところ、おおむねツイッター小説が快調です。
書こうと思って考え始めるときは面白いものが書ける気はしないんですけど、すぐにぽっと何らかのアイデアが浮かびます。
それがけっこうおもしろかったりすることが多いと言うことですね。
これは昨日のツイッター小説を長くしたものです。

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# by marinegumi | 2014-04-04 14:31 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

エイプリルフール用加工写真

写真を加工して作ったエイプリルフール用のおバカ写真を公開しておきましょう。
仕事中にぱぱっと作ってツイッターで公開したものです。
じっくり沢山考えるとけっこうおもしろくなりそうですけどね。



朝風呂にでも入ろうと、袋を開けると……
まじでか?

エイプリルフール用加工写真_a0152009_11471278.jpg




さてと、コーヒーでも入れて一息……
ん?どして??


エイプリルフール用加工写真_a0152009_1147583.jpg


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# by marinegumi | 2014-04-04 11:51 | 写真や お絵かき | Comments(0)