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見知らぬ鳥 (2枚)

見知らぬ鳥 (2枚)_a0152009_23574873.jpg

見知らぬ鳥が窓の外の木の枝に舞い降りた。
体の色は濃い灰色で、大きさはカラスぐらいだ。
でもカラスよりは嘴が長い。
その嘴はぬめっとしたピンク色だ。
灰色の中にそのピンクの嘴だけが嫌に目立つ。
自分の知識の中にはその鳥の名前はなかった。
かと言って鳥類図鑑を調べてみようかという気にもならないのだ。

見知らぬ鳥はそれからずっと何をするでもなくそこにいる。
殆ど身動きもせず時々羽毛を繕うだけ。
日に日に私はその鳥の存在が気になって来る。
朝も晩もただそこにいるのだけれど、なぜかその存在が気になってしょうがないのだ。
あの鳥だって生き物だから何か食べなければいけないはずだ。
だとすれば私が眠っている時だけあの木から飛び立って餌を探しているとでもいうんだろうか。
そうでなければおかしい。
私が目を覚ませば必ずそこにいるのだから。

私は夢を見ているようだ。
あの見知らぬ鳥の夢だった。
鳥は大きく羽ばたいて不気味な声を上げて鳴いたのだ。
長いピンクの嘴を大きく開いて、そして飛び立った。
木の葉っぱをまき散らしながら、その中に自分の羽毛を飛ばしながら青空に飛び立った。
今まで見たこともないほど青い青い空に見知らぬ鳥は小さくなって行った。

麻酔から覚めた私は集中治療室にいた。
癌の手術が終わったばかりだった。
病室に帰っても窓の外にはもうあの鳥はいないのだろう。



おわり




気が付けば長い間小説による更新をしていませんね。
ご存知の通りWeb光文社文庫の「ショートショートスタジアム」用の作品を日々頑張ってるからなんですね。
それ以外にも小説の発表の場が2~3あるので、お話を思いついても、これはあそこ用のに取っておこう、これは今度のあの作品にと言う感じで、なかなかこのブログにと言う事にならないんですよね。
作品はこれまで以上にたくさん書いていますので、そういう意味ではご心配なく。

写真はフリー写真素材のぱくたそさんでお借りした写真を加工したものです。

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# by marinegumi | 2017-05-09 00:01 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

「ショートショートスタジアム」作品4本目です。

「ショートショートスタジアム」作品4本目です。_a0152009_1037317.jpg


Web光文社文庫の「ショートショートスタジアム」が更新されています。(第27回)
僕の作品「あの日の切符」が掲載されていますので読んでくださいね。
これで4作品目になります。

「ショートショートスタジアム」作品4本目です。_a0152009_10395172.jpg


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# by marinegumi | 2017-04-15 10:41 | わたくし事 | Comments(2)

発売中「ショートショートの宝箱」

発売中「ショートショートの宝箱」_a0152009_23405665.jpg

「ショートショートの宝箱: 短くて不思議な30の物語」が光文社文庫より発売になっています。
どうぞ皆さん書店でお求めくださいね。
僕の作品「ぼくにはかわいい妹がいた」が掲載されています。

そうだ、一度本屋さんに行って並んでいる所を見てみたいかも。


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# by marinegumi | 2017-04-13 23:44 | | Comments(0)

ショートショートの宝箱

光文社文庫から「ショートショートの宝箱」と言う本が出ます。
30人の作者による30編のショートショート集です。
この中に僕の作品も掲載されていますのでまた読んでくださいね。
発売は4月11日です。
Web光文社文庫のサイトに書影がアップされています。

ショートショートの宝箱_a0152009_16372611.jpg

表紙には作者の名前が。
そうそうたるメンバーの中に僕の名前もありますね。
いいのかなあなんて思ったり。

作者名を書いておきます。

我妻俊樹
飴村 行
荒居 蘭
井上 史
井上雅彦
海野久実
江坂 遊
太田忠司
梶尾真治
加門七海
北野勇作
工藤玲音
黒川進吾
黒木あるじ
子狐祐介
篠田真由美
柴田千秋
高井 信
田丸雅智
行方 行
成宮ゆかり
西崎 憲
橋本喬木
平山夢明
深田 亨
堀  晃
三川 祐
皆川博子
八杉将司
吉澤亮馬

名前を見ただけで、ドキドキわくわくするお気に入りの作家の方々と名前が並んでいるのは夢見ごこちです。
僕は光文社文庫などの、井上雅彦さん監修の「異形コレクション」シリーズが好きで、よく読んでいるんですが、このシリーズにいつか作品を載せられたらいいのになと、あこがれていたんですね。それが今はもう「物語のルミナリエ」以降、刊行が止まっています。
でも、この「ショートショートの宝箱」で、その願いが叶ったような気がします。
井上雅彦さんの名前もありますしね。

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# by marinegumi | 2017-03-28 17:08 | | Comments(4)

校庭の桜の木 (2枚) ~空見の日~

3月16日は、もぐらさんの呼びかけで『空見の日』なのでした。
空見の日は、みんなで空を見上げようという日です。
毎回忘れていて他の人のブログを見て、そうだった~と思い出すのですけどね。
そう言う訳で一日遅れの『空見の日』。
でもまあ、空は昨日から今日へと続いているわけで(^_-)

校庭の桜の木 (2枚) ~空見の日~_a0152009_1712220.jpg


今日は雲一つない空でした。
写真では結構青く映っていますが、実際は春がすみと言うやつでしょうか、もっと白っぽい空なんですね。

ではさっき作ったお話です。



校庭の桜の木

それはある春の日の事だった。
学校の校庭に一本の桜の木があった。
放課後、傘を持ってなかった君と僕は雨が止むまでその木の下で雨宿りをしたね。
上を見上げると花が満開で、それでもやっぱりいくらか雨は落ちてきて。
濡れた君の頭にハンカチをかけてあげた。
いつもいじめられていた僕たちにはそこしか雨宿りをする場所はなかったんだ。

それは夏休み前のある日だった。
みんな帰ってしまった放課後。
君と二人で鉄棒をしていると急に空が暗くなり夕立がやって来た。
その時も校庭の桜の木の下で雨宿りをした。
上を見上げると濃い緑の葉が揺れるほどの大粒の夕立だった。
二人して木の幹を背にして囲むように両手をつないだね。

今はもう誰もいない学校。
あれから何年が過ぎたのだろう。
閉じられたままの校門を乗り越えて雨の中、校庭に入って来た。
桜の木は花をすっかり落していて、葉桜にはまだ早い。
木の下でずぶぬれになりながら雨が止むまで待つことにした。
見上げると枝の間から青空が少しのぞき始めるのが見えた。

君はもういない。
僕だってもうここに帰って来ることはないだろう。
すっかりぬれてしまったけれど、これは僕の雨宿りなんだ。





おわり



みなさんの「空見の日」の記事です。
もぐらさん「空見の日」
はるさん「今日は空見の日」
りんさん「天国の歓迎会(空見の日)」

他にも「空見の日」に参加してらっしゃる人はいないかと探してみました。
いらっしゃいましたね~

八少女 夕さん「空見の日」
harumimiさん「札幌の空」
雫石鉄也さん「ハクモクレンの木」

みなさん勝手にリンクしてしまってごめんなさい。
もぐらさん、他には参加してらっしゃる方はいないのでしょうか?

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# by marinegumi | 2017-03-17 17:05 | 掌編小説(新作) | Comments(8)