扉が開いた (ツイッター小説) 43~45

その43
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扉が開いた。
通り抜けて新しい人生を手に入れた。
気の合わない夫との我慢を重ねた日々と別れ、私は彼と出会う前の時間まで戻ったのだ。
記憶はそのまま残っていた。
別の人と結婚して幸せな家庭を手に入れたはずだった。

前の人生で生まれ、もう永遠に失ってしまった二人の子供の記憶が私を一生苦しめた。




その44
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扉が開いた。
小学校で同じ組だった懐かしい顔が私を待っていた。
「加奈は今日も遅刻やなー」
そう言ったのは武だった。
全員がどっと笑った。
「これで揃ったね。入って来れば?」
委員長の優花が手招きをした。
みんな待っていたんだ。
老人の私はみるみる子供の頃の姿に戻った。

私が一番長生きしたんだね。




その45
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扉が開いた。
バスに5~6人が乗り込んで来た。
そこは最近出来た新興住宅地のバス停なのだ。
一軒の家の扉が開き子供の泣き声が聞こえた。
久しく聞く事のなかった声だ。
家の扉とバスの扉が同時に閉じる。
古いわが町も少しは活気づいて来たんだなと思った。

あくる日、幼児虐待死のニュースを見るまでは。




ツイッター上では、「扉が開いた」は50本完結しています。
3本づつアップすると、最終回は2本になってしまうので、おまけの1本も書きました。
お楽しみに。
今回の3本は結構自分でも内容の濃い3本がそろったなと思っています。

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Commented by haru123fu at 2011-06-22 19:03
どの作品も、最後の一行で全てを物語っていますね。
その43
誰もが過去への扉を開けて見たいと思う事があるでしょうね。
私も過去に戻るなら、今の記憶を持って戻りたいと思っていました。
だって、記憶が無く戻っても同じ人生を歩むだけだから。
>もう永遠に失ってしまった二人の子供の記憶が私を一生苦しめた。
いや~これにはドッキリです。今のままがいいですね。
その44
ステキなお話ですね。みんなが昔のままで待っていてくれた。
そんな扉を開くことが出来るようがんばらなくっちゃ(笑)
その45
子どもの声って、とても元気がもらえるものです。
裏の公園から、保育園の子どもたちの声が風に乗って私の部屋へも流れてきます。なんだか自分も活気づく感じです。
あらら、最後の一行、ドキッ!です。(笑)



Commented by 春待ち りこ at 2011-06-23 00:14 x
どの作品も
完璧に。。。ストーリーですね。
海野さんの凄さを感じます。
特に。。。その44。。。これは、私のお気に入りです♪

もう少し、長めに読みたいくらい!!!
この短さで。。。泣きそうでした。
あぶない、あぶない。。。クスクス(´艸`o)゚.+:
Commented by ヴァッキーノ at 2011-06-23 23:05 x
その44がいいですねえ。
なんていうか、感情の津波が襲うっていうか
悲しみの果てにあるものを見つけて
幸せになるというか
いいものは、いい!
って感じ。
Commented by marinegumi at 2011-06-27 23:45
haruさんこんばんは。
「パンドラ効果」というSFの短編集があるんです。
開けてはいけない物を開けてしまったために予期しない何かが起きるというパターンのお話。
「その43」はそうれですね。
他にも同じパターンの作品もあると思います。
こういうパターンに当てはめてお話を考えるのも一つの方法だと思いますよ。
Commented by marinegumi at 2011-06-27 23:51
りこさんこんばんは。
「その44」は僕も気に入っています。
「扉が開いた」を終わらせたら、これまでのついのべで、出来そうな物を短編にして行こうかなと思っています。
「その44」はその候補の筆頭ですね(笑)
Commented by marinegumi at 2011-06-27 23:56
ヴァッキーノさんこんばんは。
「その44」がなかなか好評をいただいていますね。
人生の最後がこうだったらいいですよね。
一番幸せだった時代の自分に戻って、旅立つという感じでしょうか。
ここに出てくる同級生たちもそれぞれ違う自分の一番幸せだったころの自分に戻って行ったんでしょう。
by marinegumi | 2011-06-22 11:55 | ツィッター小説 | Comments(6)