わたしのしゃしん (3枚)
わたしのおうちにはわたしのしゃしんがない。
かぞくのアルバムにも、お兄ちゃんのアルバムにも、わたしのしゃしんは一まいもない。
そんなのおかしいとおもって、まえにいちどお母さんにきいたことがある。
「火事で焼けてしまったのよ」
お母さんはそういってかなしそうなかおをした。
お母さんをかなしませたくないので、わたしはそれからはきかないようにしていた。
わたしはずっと小さなころのことはおぼえていない。
しゃしんをとってもらったこともあるようで、ないようで、よくわからなかった。
でも、このあいだ三さいになってから、かぞくでゆうえんちにあそびにいった。
そのときにみんなといっしょにしゃしんをとったんだ。
そのしゃしんはきっとあるはずだとおもってお母さんにきいた。
「そうね。写真はちゃんとありますよ」
お母さんはそういったけれど、なぜかやっぱりかなしそうだった。
お母さんはひきだしからしゃしんをとりだした。
まだアルバムにはっていないしゃしんだ。
わたしはそれをわくわくしながらみていった。
はじめてみるじぶんのしゃしん。
でも、そこにはわたしがうつっているしゃしんは一まいもなかった。
お兄ちゃんとお父さんお母さん、三にんのしゃしんはある。
たのしそうなわたしのかぞく。
お母さんがいった。
「今日は本当の事を言います」
お母さんはなみだぐんでいた。
「あなたはね、生まれてすぐに病院で死んでしまったのよ」
わたしはせなかがシュン、とさむくなった。
「わたしが家に帰ってから七日目にあなたが幽霊になっておうちに戻って来たの」
お母さんはもうぼろぼろとなみだをながしていた。
「あなたは自分が幽霊だと思わずに、わたしたちと一緒に暮らして、今まで大きくなって来たのよ」
お母さんはわたしをだきながらいつまでもないた。
そうなんだ。
だきしめてしまうとお母さんのうではわたしのからだをとおりぬけちゃうから、そっとやさしくだいてくれるんだ。
まるでわたしのからだがそこにあるように。
おわり
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by marinegumi | 2012-10-27 07:00 | 掌編小説(新作) | Comments(8)
>2~3枚で
なんて、勝手な注文付けてごめんなさいです。
でも、素敵な作品でした。ありがとです。(__)ペコリ
なんでも、ショートショートを自動でいくらでも考えるコンピューターができたそうですね。
それでも、こういうお話は、書けないんだろうなあ。
幽霊が書くショートショート。
っていう感じですよね。
ショートショートマシーンですね。
そういう機械が出来たと言うショートショートを昔書いた事があります。
機械が故障して15枚のショートショートが全部最初の1枚と同じ文章だったと言う落ち。
それを自動的に封筒に入れて編集部に送ってしまって問題になると言うね。
ショートショートに復活後、コメントにも復活と言うわけですね。
お母さんには、ずっと「わたし」が見えていた(いる)のですね。
「わたし」もかぞくと一緒に過ごせる。
「わたし」を写さない写真機はきっと出来のわるい写真機なのでしょう。きっと・・・そうだと思います。
あー、そうか。
お母さんだけに見えているのか、家族にも見えているのかですね。
その辺を考えればも少し長いものにも出来るかな。
このお母さんは本当に愛情がいっぱいの人なんでしょうね。
幽霊でもいいからずっと一緒にいてあげてほしいですね。
お母さんの空想の産物だったなんて結末にしちゃうとあまりに悲しすぎるので、そうはしませんでした。