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名探偵失踪 (2枚)

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画像は雑貨通販サイト「shipton」さんでお借りしました。「おしゃれな真鍮ルーペ」


近頃、街では殺人事件が頻繁に起きていました。
それもみな警察の手に余る複雑怪奇な事件ばかりでした。

しかしその殺人事件の謎を解き、ことごとく犯人を特定してしまう天才的な名探偵が現れたのです。
今日も今日とて……

「犯人はお前だ!」
事件関係者が集められた部屋の中で名探偵は声を上げました。
指さされた男は顔色を変え、逃げ出そうとしましたが、その場に居合わせた警官によって取り押さえられました。
「いやあ、お見事です。あなたの名探偵ぶりは後世まで語り継がれることでしょうな」
でっぷりと太った警部が名探偵に握手を求めました。

その時、一人の少女が名探偵の前に歩み寄ります。
「犯人がわかっても死んでしまったパパは生き返らないわ!」
そう叫んで少女はその場に泣き崩れました。
「君はあの被害者の娘さんだね」
名探偵は優しく少女を抱き起します。
そして涙があふれたその瞳を見つめながら言いました。
「そうだね。私は少しも君の力になれなかったね。許しておくれ」

その日以来名探偵は姿を消しました。
探偵事務所にも明かりが点かず、ずっと鍵が掛かったままでした。
警部が何度も訪れましたが、ようとしてその行方は知れませんでした。

しかしその後、街では殺人事件が驚くほど少なくなりました。
喧嘩や強盗などによる単純な、突発的な殺人事件はあったものの、以前のような謎に満ちた警察の手に余る事件が全くなくなったのです。

人々はうわさをしました。
「あの名探偵が事件の起きる前に解決しているんだね」と。



おわり



きのう書いたツイッター小説を長くしてみました。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくれました。
いつもありがとうございます。


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by marinegumi | 2016-01-08 17:13 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

Commented by haru123fu at 2016-01-09 19:39
朗読のお願いです。
よろしくお願いします。m(__)m
Commented by marinegumi at 2016-01-10 00:10
はるさんこんばんは。
よろしくお願いします。
これぐらいのお話なら、毎日でも書こうと思えば書けるんですけどね。
仕事中にちょこっと時間があれば(こらこら)
Commented by 雫石鉄也 at 2016-01-12 14:08 x
なるほど、犯罪予備軍が犯罪を起こす前につかまえていたわけですね。
なんだったか忘れましたが、ウィリアム・テンだったかな、アメリカの短編SFに「予定犯罪者」とかいうのがありました。
もっとひねって、実は探偵が黒幕で、これまでの事件は全て探偵が陰で画策して起こしていたというのはどうでしょう。
Commented by marinegumi at 2016-01-18 20:02
雫石さんこんにちわ。
そうですね。
SFだったら、ここはタイムマシンの出番でしょうか。
犯罪を犯す前の時間に戻って、逮捕する。
ところがまだ犯罪をおかしていないので逮捕できない。
うーむ。
これはパラドックスですね。
>実は探偵が黒幕で、これまでの事件は全て探偵が陰で画策して起こしていた
そこまで書こうとすると最初の目論見と違ってきますね。
実はこの作品はファンタジーなのです(笑)