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小さな郵便局 (2枚)

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小さな町の郵便局は、かわいい赤いとんがり屋根の建物だ。
それはなぜか町の中心から少し離れた森の入口にある。
自動扉の横には色とりどりの草花に埋もれるようにして三つのポストがあった。
左から青いポスト、赤いポスト、白いポスト。
青いポストにはこう書かれていた。
「淋しい、悲しい気持ちで書いた手紙はこちらへ投函」
赤いポストにはこう書かれていた。
「嬉しい、楽しい気持ちで書いた手紙はこちらに投函」
そして白いポストにはこう書かれていた。
「事務的な御用事の手紙はこちらへ投函」

ある日私は恋をした。
わくわくするような、でも泣きたいような気持だった。
楽しいようでいて、なんだか不安な気持ちだった。
自分でもよく解らないそんな気持ちでラブレターを書いた。
ちいさな郵便局に自転車で向かっている間、この手紙はどのポストに入れたらいいのかと、ずっと迷っていた。
自転車を降りてポストの前。
季節の草花に埋もれるようにしてポストは置かれていて、それは四つあった。
増えているのはピンクのポストだった。
それにはこう書かれていた。
「まだ不安定な恋をしているあなたの手紙はこちらに投函」



おわり




何か小説を書こうかなと思えば、最近のツイッター小説をごそごそ。
物になりそうなのを引っ張り出して気の向くままに肉付けをして出来上がり。

ブログ「ゆっくり生きる」の、はるさんが朗読してくださいました。


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by marinegumi | 2016-04-15 23:57 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

シナモンの枝 (6枚)

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ゆったりと目が覚めた。
目覚ましの音に起こされるのではなく、自然に目がさめたんだ。
きょうは学校はおやすみ。
とてもいい気分。
さっきまで何だかふんわりした夢を見ていたような気がしたけれど何も思い出せなかった。
起き上がってベッドから床に足を降ろした時、スリッパの横に何かが落ちているのが見えた。
拾い上げるとどうやらパンくずみたいだった。
指先で押さえてみるとまだやわらかだった。
変なにおいもしなかったからそんなに古いものじゃないようだ。
でもわたし、寝室でパンなんか食べたりしたことはなかったはずだよ。
部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた時、そこにもパンくずが落ちているのに気がついた。
ドアを開けると廊下にもパンくずが転々と続いている。
パン屑に誘われるようにして階段を降り、外へ出る玄関のドアの前まできた。
ドアには鍵が掛かっている。
パパもママもまだ眠っている時間だからね。
ドアを開くと庭の敷石の上にもパンくずは続いていた。
それをずっとたどって庭を出て、街へ出て、たくさんの自動車の通る道路の歩道を何ブロックも歩いた。
まだ寝起きの目にはお日様がまぶしかった。
歩いて歩いて、歩き続けた。
これまでのパンくずをひとつにまとめると、多分もうコッペパン5個ぐらいにはなったかもしれないぐらい歩き続けた。
建物が少なくなり、パンくずは緑の木々の間の道の上に続いていた。
道はだんだん細くなって行って、とうとう大きな森の中へやって来てしまった。
その森を奥へ奥へと歩くうちにわたしはぼんやりと思い出していた。
昨日見た夢の中の出来事を。
夢の中におばあさんの住む家があったんだよね。
わたしが通りかかった時、おばあさんが急に家の中から飛び出してきたんだ。
「ああ、困った困った。シナモンの枝がなくなってしまった」
そう言いながら頭を抱えているおばあさんとわたしの目が合った。
「だれだい?あんたは」
わたしは正直に自分の名前を言った。
「ふん。そんなへんてこな名前の女の子なんて知らないね」
「何に困ってるんですか?」
と、わたしは聞いてあげた。
「魔法を使うのに絶対必要なシナモンの枝がなくなったのさ。たぶん小鬼の奴が持ってったに違いない。シナモンの木はこの森には生えていないと言うのにさ。ああ、困った困った」
「シナモンの木ならうちの庭に生えてたわよ」
「そ、それはどこなんだい?お前の家はどこだ?」
わたしは家の所番地を言ったけれど全然わからないみたいだ。
だって今わたしは夢を見てるんだから。
おばあさんは夢の中の住人だし、わからなくても仕方がない。
「おお、どうかそのシナモンの枝を一本切って来ておくれ」
わたしは自分が今、夢を見ているんだと言う事を説明した。
「そうか。それならば歩いて帰ればいいさ。このパンを持ってお行き。小さくちぎりながら道に落として行って、帰って来るときの目印にするんだよ」
そう言っておばあさんはわたしの背の半分ぐらいある大きなパンを渡してくれた。
「でも帰り道がわからないわ。まあ、目が覚めれば自然と帰れるとは思うけど」
「だめだめ。目が覚めて帰ったんではここに戻って来られないのさ。歩いて帰らなくちゃね。このまま森のはずれまで行って、そこから先は目をつぶって時々パンくずを落しながら歩くんだよ。必ず帰れるから。そしてちゃんと帰れたらシナモンの枝を持ってパンくずを目印にもう一度来ておくれ。頼んだよ」
そうなんだよね。
そんな夢を確かに見たんだよ。
森の中の道をおばあさんの家の前まで来た時にはすっかりその夢を思い出していたんだ。
そしてシナモンの枝を持って来るのまで忘れていたことを。
その時、おばあさんが足音を聞きつけたのか、家から飛び出してきた。
「シナモンの枝はあったかい?!」
「そ、それが……」
わたしはおばあさんに今までの事をお話しした。
「そうかいそうかい。それはしかたがないね。もう一度、今度は忘れないようにメモを書いて持って行けばいいよ」
そう言うとお婆さんは羊皮紙にインクをたっぷり付けたペンでこう書いたんだ。
『シナモンの枝を一本。森の中の家へ』
わたしはそれを手に持ってもう一度家に歩いて帰る事になった。
今度はパンくずを落としながらではなくてね。
そして森の外れまで歩いて来ると……

ゆったりと目が覚めた。
目覚ましの音に起こされるのではなく、自然に目がさめたんだ。
きょうは学校はおやすみ。
でもなんだかまだ眠い。
さっきまで長い長い夢を見ていたような気がしたけれど何も思い出せなかった。
ふと手を見ると何か紙のようなものをわたしは握っていた。
広げてみる。
『シナモンの枝をありがとう。一生恩に着るよ』
何のことやら訳がわからなかった。
それに、ぐっすり眠ったにしては足が痛くて、なんとなく疲れていたんだよね。

すぐに二度寝しちゃって、昼ご飯に呼ばれるまで目が覚めなかった。



おわり



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by marinegumi | 2016-04-03 00:49 | 掌編小説(新作) | Comments(0)