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キャベツの千切り (2枚)

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最新式のお手伝いロボットは頼りになる。
家事のことなら何でもおまかせだ。
掃除から、ゴミの分別、ゴミ出しまで。
洗濯から、乾燥から、たたんでタンスに仕舞う、出かける前にはちゃんと洋服一式揃えてくれる。
お買い物から、献立から、お料理、後片付けまで。
食事後に口の周りが汚れているとちゃんと拭いてくれるしさ。
料理もおやつもおいしい上にお腹いっぱい食べても太っちゃうということもない。
カロリー計算も正確だからね。
まあ、その代わりお母さんが勉強勉強とうるさく言う時間が増えたんだ。
でも、プラスマイナスすればプラスのほうが大きいかな。
日々の暮らしはメリーさん(ロボットの名前)におまかせで大丈夫。
今日も台所から軽やかな包丁の音が聞こえる。
今夜のごちそうは何だろうか?
さっき台所を覗いたんだ。
きっとあれはトンカツだと予想した。
今はキャベツの千切りを作っているのかも。
宿題を片付けて、おやつを食べて、眠くなったのでちょっとお昼寝。
 
目が覚めた。
台所から、まだ包丁の音が聞こえる。
トントントントン、軽やかな気持ちのいい音。
でもあんまり長くないか?
いつまでどんだけ作ってるんだ?
ちょっと嫌な予感がして、台所を覗いた。
台所に緑色の小山が出来ていた。
それはきれいにそろったキャベツの千切りだった。
もうすぐ天井まで届きそうに盛り上がっている。
メリーさんはそのキャベツの小山の中で、まだ千切りを作り続けている。
「太陽のフレア爆発の影響で強力な電磁波が地球を襲いました」
テレビの臨時ニュースが流れていた。



おわり



元ツイッター小説。
もう入院してから15本ほどショートショートを完成させました。
ブログ用や、あっち用や、そっち用にね(笑)

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by marinegumi | 2016-11-22 14:46 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

ハートのペンダント (3枚)

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お母さんが死んでから、ぼくは毎日のように泣いて暮らした。
さみしくてさみしくて、どうしようもなかったんだ。
お母さんがいなくなってぼくはただのぬけがらになったような気がしていた。
涙ばかりでふくらんだぬけがらだ。
一日がすぎるのが長かった。
こんな日がずっと続くのはたえられないと思い始めていた。
 
ある日、お父さんが中古の主婦ロボットを買ってきてくれた。
「死んだお母さんの事は忘れるんだぞ」
そう言いながらロボットのスイッチを入れた。
小さな機械音がしてロボットは目を覚ました。
「よろしくおねがいします」
と、やさしい声で言った。
「お前が好きな名前を付けなさい」
ぼくはお父さんにそう言われてロボットに名前を付けた。
「マーミー」と。
それは「お母さん」でも「ママ」でもない。
代わりになんてなれないと言うぼくの思いからだった。

ロボットは家事の合間にぼくと遊んでくれたのでたいくつはしなくなった。
顔はとても良く出来ていて、本当の女の人のように見えた。
ぼくにやさしい言葉もかけてくれる。
でも声も顔もぜんぜん無表情だからぼくのさみしさは少しもまぎれなかった。
ふと一人になったとき、またすぐに涙が出てしまうんだ。
ロボットはやっぱりロボットなんだと思った。

ある日お父さんがハートのペンダントを買って来た。
「ほらプレゼントだぞマーミー」
そう言いながら箱から出してロボットの首にかけてあげた。
すると急に動かなくなり、首をうなだれた。
ぼくが心配していると、数十秒後に小さな機械音がして目を開け、マーミーはすごい笑顔になった。
「再起動したんだ」とお父さんが言った。
マーミーはぼくの方にくるんと向き直るとはしゃぐように言った。
「まあ、うれしいわ。なんて素敵なペンダント。似合うかしら?ぼうや」
マーミーはその声もその顔も見違えるように表情豊かになっていた。
ぼくは胸がチクリとした。

そのペンダント型の物は、ロボットに感情を入力するオプションだったんだ。
ただのロボットだったマーミーは、その日からぼくの、ぼくたちのマーミーになった。
お母さんでもなくママでもなかったけれど。




おわり



ツイッター小説にちょこちょこ手を加えるとショートショートの出来上がりっと。

写真はプリ画像さんにお借りしました。

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by marinegumi | 2016-11-12 19:12 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

クリスマスイブの雪 (3枚)

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真っ暗い空から雪が降っている。
この町では雪が降るのさえ珍しいのに、今夜はまたちょうどクリスマスイブだった。
しかし積もるほどには降らないだろう。
「おねえちゃん。覚えてる?」
「何をよ?」
その枯れかけた生け垣に囲まれた狭い瓦礫だらけの土地に二人は立っていた。
少年は12歳ぐらい。
少女はそれより1〜2歳年上に見える。
二人とも真冬にしてはずいぶん薄着だった。
マフラーも手袋もしていない。
「昔のクリスマスイブさあ。ここにあった家に住んでた頃、サンタクロースが来たっけね」
「ウフフ、あんた覚えてんだ」
「あの日もこんなふうに雪が降ってたもん」
「そうだよね。ホワイトクリスマスだ〜ってみんなはしゃいでた。思い出してみるとさあ、たぶん雪の降ったクリスマスなんて、あの日と今日と二回だけじゃないかなあ?」
少女は掘り返されたコンクリートの塊(かたまり)に腰を下ろして、今はない我が家を思い描いた。
「うちには煙突があったよね。細くて今にも折れちゃいそうな煙突。あんたったらあんな煙突からサンタさんが入って来れるか心配してさ。何度も何度も、ねえおねえちゃん、どうしよう?どうしたらいい?ってしつこいの。あたし、もういやんなっちゃってさ、あんたの頭げんこでなぐっちゃった」
少女はぺろりと舌を出す。
「ひ、ひどいなあそれ」
「あんた、それは覚えてないのね。ああ、そうか。たぶんそのすぐあとにサンタさんが入って来てびっくりしたからでしょ。急にバターンってドアが開いてさ。雪が吹き込んでサンタクロースが立ってたんだもん」
「サンタさんにもびっくりしたけど、ドアが外れて倒れちゃってさ。花瓶が壊れるし、カーテンは破れるし、サンタさんぼーぜんとしてたよね」
「ボロっちい家だったもんね。平屋のさあ、二軒長屋の半分を切り取った家だったから」
「あのあとどうなったかよく覚えてないんだ。プレゼントもらって嬉しかったのは覚えてるけどさ。そうだ、このサンタはお父さんが化けてるかもしれないって思ってジロジロ見てたら、奥の部屋からお父さんが出てきて、ご苦労さんって言ったような……」
「あれはきっと本物のサンタさんだったんだよ」
「なつかしいよね、あの頃が」
「何言ってんの、年寄りみたいに」
笑いながら二人は空を見上げた。
もうしばらく雪は降り続きそうだった。
取り壊された家のあとに残されている瓦礫の上に、うっすらと雪が積もっていた。
その時、隣の土地に建っている家の掃き出し窓のカーテンが開いた。
女の人らしい人影が見え、その人はサッシのガラス窓を開いて叫んだ。
「あんたたち!そんなところで何してるのよ!」
二人は顔を見合わせた。
「そんな薄着じゃ風邪引いちゃうわよ。早く入りなさい!」

二人が家族と住んでいた家は取り壊されたが、それに先立って隣の土地に新しい家が建てられていた。
古い家のあった土地は来年にでも整地され、新居の裏庭になる予定だった。
「暖房きかせすぎるからさあ、ちょっと涼んでたんだよな。へ〜クション!」
「あ、ほら、言わんこっちゃない」



おわり



はるさんともぐらさんのクリスマスパーティー用に書き下ろした作品です。
病室からの更新3本目〜(笑)

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by marinegumi | 2016-11-09 09:48 | 掌編小説(新作) | Comments(6)