人気ブログランキング |

水槽 (2枚)

a0152009_17453214.jpg

熱帯魚を買ってきた。
夕焼けの色をしたプラティーを15匹。
プラティーを入れる前に水槽の中に景色を作りたくなった。
魚たちにはビニール袋のまま、エアーポンプで空気を送り、待ってもらうことにした。

色違いの砂を何層かに敷き、丘を作り、水草の樹木を植える。
左奥にはこんもりとした森を作る。
丘には曲がりくねった道を作り、その先にレンガ造りの家を置く。
庭を柵で囲い、郵便ポストを取付け、外灯のポールを立てる。

ふと思いついて、道だけを残してごく短い水草をびっしりと植えた。
砂でグラデーションを描いた地面は見えなくなったけれど、それはそれでいい。
やりだしたらとことん凝らないと気が済まないのがぼくの悪い癖だ。

水槽の中のその景色を確認して、やっと水を張りだしたのは夕暮れ近かった。
注意深く、景色を壊さないように少しづつ水を入れていると窓の外に音が聞こえた。
いつの間にか空は雲に覆われ、夕立が降り出したところだった。
なんだか大雨になりそうな予感がした。



おわり


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-06-19 17:46 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

雨宿りの木 (3枚)

a0152009_1657108.jpg

学校帰り。
青空の下。
僕はビニール傘をステッキの様に持って、左右に揺らしながら歩いていた。
街を外れ、川に架かった橋を渡り、いつもの野原の中の道を歩いて行く。
女の人が怪訝そうな顔で僕を見送っていた。

やがて空に雲がかかり、間もなく雨が降り出した。
ビニール傘を開く。
雨は強くなりビニール傘の上を流れる。
しばらく歩くと小さな池のそばの一本の大きな木が見えてくる。
そしてその木の下には雨宿りをする映子ちゃんがいた。
「こんにちは」
僕が声をかけると映子ちゃんはにっこりとほほ笑む。
いつも胸がきゅんとするすてきな笑顔だ。
僕は今日、学校であった事をあれこれ映子ちゃんに話してあげる。
「へえ?そうなの」
「麻衣ちゃんが?」
「そんなのうそでしょ!」
映子ちゃんはそういう風に相槌を打ちながら楽しそうに聞いてくれる。
話し終わり、ふと沈黙が下りる。

僕はいつも迷っている。
映子ちゃんに告白するかどうかを。
こんなにも好きで好きでたまらない気持ちを打ち明けるかどうかを。
でも、いつも決心がつかないのだ。
映子ちゃんが僕の気持ちを受け入れてくれたら僕はどうなるのだろう?
君とずっと一緒にいられるのだろうか?
映子ちゃんは可愛かった。
まつ毛の一本一本さえ現実的に見えた。
幽霊だなんて信じられなかった。

あいつに振られただけで、雨の日にこの池に身を投げた映子ちゃん。
何でいつまでもここにいるんだい?
僕が会いに来るのを待っているの?
そして僕が告白するのを待っていてくれてるのかい?

木の下に幽霊が出ると言ううわさで、この辺りには誰も寄り付かない。
どんなに良いお天気の日でも年中雨が降っている不思議な場所。
毎日僕が学校に傘を持って来るのは映子ちゃんに会うためだ。

さよならを言って僕は歩き出した。
いつか映子ちゃんに告白する日が来るのだろうか?



おわり



この作品はりんさんのブログ「りんのショートストーリー」の作品「雨が嫌いになった日」のコメント欄に書いた僕のお話のアイデアを元にしてでっち上げた作品です。
こういうコメントをしたことさえ忘れていましたが、今日、ふと思い出してしまいました。
と言うか、長いコメントだったのでワードで下書きをした物が残ってたんですね。
それを見つけて、なんだこれはと思って。
それを元に一つ書いてみようと言う事になったわけです。

りんさんの「雨が嫌いになった日」は2013年6月の作品ですね。
そして、映子ちゃんはこの作品の登場人物と同じ名前です。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-05-29 16:58 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

食べ物 (3枚)

a0152009_18443537.jpg

旅の途中だった。
ある村を通り過ぎようとしていた時に、もう食料品がない事に気がついた。
もうそろそろ昼になる頃で、急に空腹を感じた。
そこに何やら小さな食料品店らしい小屋が見えて来る。
店先に立つと一人の黒づくめの服を着た老婆が中に座っているのが見えた。
いくつかある台の上にはかごに盛られた卵ぐらいの大きさの白いものが並んでいる。
多い少ないはあるものの、どのかごもみんな同じものだった。
「これは何ですか?タマゴかな?」
そう声をかけるとそれまで影の様に身動きしなかった老婆はのそりと体を動かした。
「食べ物じゃよ」
「ええ、何という食べ物なんですか?」
老婆はまじまじと私の顔を見た。
そしてよそ者だと気がついて納得したのか、小さくうなづいた。
「食べ物じゃよ。そう。タマゴだと思って食べればそれはタマゴだし、肉だと思って食べればそれは肉なのじゃ」
「ええ?そんな食べ物があるんですか?」
「そうじゃよ。だからこの村の者はみんなこれを買って帰るのさ。畑を耕す必要も、狩に出かける必要もない」
「それじゃあ私もいただきます。これぐらいでいいかな」
私は10個ぐらいが盛られたかごを指さした。
老婆は皿から紙袋にそれを移し替えると私に差し出して言った。
「12ハンスじゃ。一回の食事に1個でいいよ」
食事10回分ならそれほど高くもない。

しばらく歩いて村はずれの川のほとりで私は座って食事をすることにした。
白い丸いものは触ると軟らかくて不思議な感触だった。
しっとりしているようで乾いているようで、潰れそうでいてしっかり弾力がある。
「食べる時はこれが食べたいものだと想像して食べるんじゃよ」
老婆の言葉を思い出していた。
それを口に入れた時、変な想像をしてしまった。
「し、しまった」
またたく間にひどい吐き気とめまいに襲われた。
そして意識が遠のいて行く。
私はそれを毒キノコだと想像してしまったのだ。




おわり




ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんがこの作品を朗読の動画にしてくださいました。
いつもありがとうございます。



ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-05-28 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

イチゴのショートケーキ (3枚)

写真は、フリー写真の「ぱくたそ」さんでお借りしました
a0152009_1838027.jpg

気がつくとぼくは暗い部屋に立っていた。
何となくの雰囲気と匂いで自分の部屋だと分かった。
ひょっとしてぼくは立ったまま眠っていたんだろうか?
でも、眠りから覚めたという感じはしない。
ただ、そう、気がついたとしか言いようがないんだ。

部屋は真っ暗ではない。
どこからともないほのかな光が部屋全体に満ちている感じだった。
ぼくはなんとなく壁に掛けてある大きな鏡の前まで歩いた。
この鏡はぼくのおばあちゃんが残したものだ。
床の上から2メートル近くも高さがある。
ちょうどこの部屋のドアぐらいの大きさだった。
そう、この部屋は前にはおばあちゃんが使っていた。
おばあちゃんが死んでから間もなくぼくの部屋になった。
家具もベッドも、すっかり入れ替えたけれど、この鏡だけはそのまま残っている。
夜中に目が覚めてトイレに行く時なんかは、必ずこの鏡の前を通る。
そしていつも暗い部屋にいる鏡の中のぼくと目が合うのだ。
なんだかその鏡の中のぼくは、ぼくとは違うもう一人のぼくのような気がした。
今にも、ぼくの動作に縛られず勝手に動き出すのではないかと不安混じりの不思議な気持ちになった。
でも、決してそれは怖いと言う感じではなかった。
薄暗い部屋の中にいる鏡の中のぼくが昼間のぼくとは違う存在のような気がしたのだ。

いつもするようにぼくは鏡の前に立ち、横目で鏡の中のぼくを見ようとした。
でもそこには誰も映っていなかったんだ。
ただ薄暗い部屋がぼうと映っているだけだった。
手を伸ばしてみた。
その伸ばした手も鏡に映る事もなく、鏡の表面に触りもしなかった。
勢い余ってぼくの体はするりと鏡の向こうにすり抜けてしまった。
振り返って手を伸ばすと冷たく硬いガラスの感触があった。
閉じ込められた?
一体どうやって鏡は扉を開き、また閉じてしまったんだろう?
鏡の外側の薄暗い僕の部屋が見える。
窓際に置かれたテーブルの上に見なれない物があった。
それは額に入ったぼくの写真らしかった。
その写真の前には、お皿に乗ったぼくの大好物のイチゴのショートケーキが見えた。



おわり



ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくださいました。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-05-15 18:42 | 掌編小説(新作) | Comments(10)

小さな郵便局 (2枚)

a0152009_23541589.jpg

小さな町の郵便局は、かわいい赤いとんがり屋根の建物だ。
それはなぜか町の中心から少し離れた森の入口にある。
自動扉の横には色とりどりの草花に埋もれるようにして三つのポストがあった。
左から青いポスト、赤いポスト、白いポスト。
青いポストにはこう書かれていた。
「淋しい、悲しい気持ちで書いた手紙はこちらへ投函」
赤いポストにはこう書かれていた。
「嬉しい、楽しい気持ちで書いた手紙はこちらに投函」
そして白いポストにはこう書かれていた。
「事務的な御用事の手紙はこちらへ投函」

ある日私は恋をした。
わくわくするような、でも泣きたいような気持だった。
楽しいようでいて、なんだか不安な気持ちだった。
自分でもよく解らないそんな気持ちでラブレターを書いた。
ちいさな郵便局に自転車で向かっている間、この手紙はどのポストに入れたらいいのかと、ずっと迷っていた。
自転車を降りてポストの前。
季節の草花に埋もれるようにしてポストは置かれていて、それは四つあった。
増えているのはピンクのポストだった。
それにはこう書かれていた。
「まだ不安定な恋をしているあなたの手紙はこちらに投函」



おわり




何か小説を書こうかなと思えば、最近のツイッター小説をごそごそ。
物になりそうなのを引っ張り出して気の向くままに肉付けをして出来上がり。

ブログ「ゆっくり生きる」の、はるさんが朗読してくださいました。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

# by marinegumi | 2016-04-15 23:57 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

シナモンの枝 (6枚)

a0152009_0475894.jpg

ゆったりと目が覚めた。
目覚ましの音に起こされるのではなく、自然に目がさめたんだ。
きょうは学校はおやすみ。
とてもいい気分。
さっきまで何だかふんわりした夢を見ていたような気がしたけれど何も思い出せなかった。
起き上がってベッドから床に足を降ろした時、スリッパの横に何かが落ちているのが見えた。
拾い上げるとどうやらパンくずみたいだった。
指先で押さえてみるとまだやわらかだった。
変なにおいもしなかったからそんなに古いものじゃないようだ。
でもわたし、寝室でパンなんか食べたりしたことはなかったはずだよ。
部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた時、そこにもパンくずが落ちているのに気がついた。
ドアを開けると廊下にもパンくずが転々と続いている。
パン屑に誘われるようにして階段を降り、外へ出る玄関のドアの前まできた。
ドアには鍵が掛かっている。
パパもママもまだ眠っている時間だからね。
ドアを開くと庭の敷石の上にもパンくずは続いていた。
それをずっとたどって庭を出て、街へ出て、たくさんの自動車の通る道路の歩道を何ブロックも歩いた。
まだ寝起きの目にはお日様がまぶしかった。
歩いて歩いて、歩き続けた。
これまでのパンくずをひとつにまとめると、多分もうコッペパン5個ぐらいにはなったかもしれないぐらい歩き続けた。
建物が少なくなり、パンくずは緑の木々の間の道の上に続いていた。
道はだんだん細くなって行って、とうとう大きな森の中へやって来てしまった。
その森を奥へ奥へと歩くうちにわたしはぼんやりと思い出していた。
昨日見た夢の中の出来事を。
夢の中におばあさんの住む家があったんだよね。
わたしが通りかかった時、おばあさんが急に家の中から飛び出してきたんだ。
「ああ、困った困った。シナモンの枝がなくなってしまった」
そう言いながら頭を抱えているおばあさんとわたしの目が合った。
「だれだい?あんたは」
わたしは正直に自分の名前を言った。
「ふん。そんなへんてこな名前の女の子なんて知らないね」
「何に困ってるんですか?」
と、わたしは聞いてあげた。
「魔法を使うのに絶対必要なシナモンの枝がなくなったのさ。たぶん小鬼の奴が持ってったに違いない。シナモンの木はこの森には生えていないと言うのにさ。ああ、困った困った」
「シナモンの木ならうちの庭に生えてたわよ」
「そ、それはどこなんだい?お前の家はどこだ?」
わたしは家の所番地を言ったけれど全然わからないみたいだ。
だって今わたしは夢を見てるんだから。
おばあさんは夢の中の住人だし、わからなくても仕方がない。
「おお、どうかそのシナモンの枝を一本切って来ておくれ」
わたしは自分が今、夢を見ているんだと言う事を説明した。
「そうか。それならば歩いて帰ればいいさ。このパンを持ってお行き。小さくちぎりながら道に落として行って、帰って来るときの目印にするんだよ」
そう言っておばあさんはわたしの背の半分ぐらいある大きなパンを渡してくれた。
「でも帰り道がわからないわ。まあ、目が覚めれば自然と帰れるとは思うけど」
「だめだめ。目が覚めて帰ったんではここに戻って来られないのさ。歩いて帰らなくちゃね。このまま森のはずれまで行って、そこから先は目をつぶって時々パンくずを落しながら歩くんだよ。必ず帰れるから。そしてちゃんと帰れたらシナモンの枝を持ってパンくずを目印にもう一度来ておくれ。頼んだよ」
そうなんだよね。
そんな夢を確かに見たんだよ。
森の中の道をおばあさんの家の前まで来た時にはすっかりその夢を思い出していたんだ。
そしてシナモンの枝を持って来るのまで忘れていたことを。
その時、おばあさんが足音を聞きつけたのか、家から飛び出してきた。
「シナモンの枝はあったかい?!」
「そ、それが……」
わたしはおばあさんに今までの事をお話しした。
「そうかいそうかい。それはしかたがないね。もう一度、今度は忘れないようにメモを書いて持って行けばいいよ」
そう言うとお婆さんは羊皮紙にインクをたっぷり付けたペンでこう書いたんだ。
『シナモンの枝を一本。森の中の家へ』
わたしはそれを手に持ってもう一度家に歩いて帰る事になった。
今度はパンくずを落としながらではなくてね。
そして森の外れまで歩いて来ると……

ゆったりと目が覚めた。
目覚ましの音に起こされるのではなく、自然に目がさめたんだ。
きょうは学校はおやすみ。
でもなんだかまだ眠い。
さっきまで長い長い夢を見ていたような気がしたけれど何も思い出せなかった。
ふと手を見ると何か紙のようなものをわたしは握っていた。
広げてみる。
『シナモンの枝をありがとう。一生恩に着るよ』
何のことやら訳がわからなかった。
それに、ぐっすり眠ったにしては足が痛くて、なんとなく疲れていたんだよね。

すぐに二度寝しちゃって、昼ご飯に呼ばれるまで目が覚めなかった。



おわり



ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

# by marinegumi | 2016-04-03 00:49 | 掌編小説(新作) | Comments(0)

屋根裏部屋 (2枚)

空見の日(おくればせwww)
a0152009_14223952.jpg

3月21日はもぐらさんの提唱する「空見の日」でした。

年に一度、空を眺める日です。
みんなで空の写真を撮って、ブログにアップします。
空って、世界中につながっていますから。
                 りんさんの受け売り(笑)

もぐらさん 「2016年空見の日
りんさん 「桃色ノ空
はるさん 「空見の日
3月17日に書いたこの掌編小説が偶然空に関する物だったので、急きょ乗っかっています。
上の写真は今日、3月25日のわが町の空です。
青空も大きい代わりに雲も大きなものがたくさん浮かんでいます。
写真は爽やかな感じですが、実際は青空と雲がせめぎ合っているようなダイナミックな空です。




屋根裏部屋

a0152009_17532959.jpg

ぼくの部屋は屋根裏部屋だ。
ベッドの真上に天窓が見える。
ぼくはその天窓のガラスを通して青空を見た記憶がなかった。
そう、昼間はただ白っぽかったり灰色だったりするだけで夜には真っ暗になる。
いつも色彩のない空を見ているだけだ。
そしていつからかずっと雨が降り続いている。
天窓のガラスの上を毎日雨が流れていくのを見ている。
ガラスが分厚いからだろうか、雨の音はかすかにしか聞こえない。
時には弱く、時には激しく雨が降り、降り続ける。
そんなモノクロの窓に一度だけ美しい色彩を見た。
赤く紅葉したカエデの葉っぱがくっついたのだ。
ベッドに寝転がって雨の流れるのを見ていたぼくは、はっとした。
まるで温かい炎ででもあるかのようなオレンジ色の葉だった。
それを見てぼくはその温かさを自分の中に一瞬感じた。
そう、そのカエデの葉はすぐに雨に流されて見えなくなってしまったのだ。
それでぼくは気がついた。
部屋は決して寒くはなかったけれど、心が冷え切ってしまっていたんだと。

雨はそれからもずっと降り続いていた。
あの時から天窓には一度も鮮やかな色を見ることはなかった。

ある日ぼくはガラスの上を雨が流れていないことに気がついた。
天窓の外は何やら薄青く、明るくなったり暗くなったりをくりかえしているのだ。
そしてそこを小さな影が横切った。
鮮やかな青い小さないくつもの影が。
魚だった。
小さな魚の群れだった。
そうなんだ。
雨はそんなにも長い間降り続き、今も降り続いているのだ。



おわり



ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-03-19 17:54 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

一枚の葉っぱ (3枚)

a0152009_025492.jpg

気がつくとぼくは一枚の葉っぱでした。
大きな木の枝に頼りなくくっついている葉っぱだったのです。
もう体はだいぶ紅葉して来ているようです。
あちこち虫に食われてもいるのです。
ぼくは、ぼくたちは大きな木の小さなたくさんの葉っぱだったようです。
ぼくの意識が目覚めた時には、ほかにもまだ5~6枚の兄弟が残っていました。
でも、それから数日で、その兄弟たちはみんな旅立ちました。
木から離れ、地面に落ち、車のタイヤや人の足に踏まれ、木枯らしにもてあそばれ、やがて粉々になってしまいました。
そして最後には土に還ってしまうのですね。
今はもうこの木に残っているのはぼくだけになりました。
ぼくもきっと兄弟たちと同じ運命をたどるのでしょう。
短い命でした。
一つもいいことのない一生でした。
一つも意味を見いだせない一生でした。
なにも成しとげられずに終わってしまうなんて。
そ、そんなのいやだ~!

あれから数か月が過ぎました。
ぼくはまだ生きているではありませんか。
なんと、ぼくは壁に描かれた枯葉の絵だったのです。
大きな木のそばのレンガの壁に、あたかもその木の最後の一葉のように描かれた絵だったのです。
誰が描いてくれたのかは分かりませんが、ぼくの意識は、ぼくが描かれたときに目覚めたのでしょう。
そうなんです。
ぼくが兄弟たちと一緒に芽生え、一緒に成長した記憶が全然なかったのもそのせいだったのです。
ふう。
なんとか命をながらえたようです。
秋がすぎ、今は夏。
大きな木はまたたくさんの緑の葉をつけています。
ぼくの兄弟ではなかったたくさんの葉っぱたちに、今では何となく親近感を覚えます。
お前たちの命はせいぜい半年なんだよと教えてやりたくなります。
今のうちに生きている喜びをかみしめておくんだぞと。

ぼくは今、虫食いの紅葉の姿のままで、毎日強い日差しにさらされています。
ときおり強い雨にたたかれます。
そしてある日、なんだか自分の体の色が薄くなってきているのに気がつきました。
あと数年もすれば太陽の光や風雨にさらされて、だんだん色あせて行くのでしょう。
そしていつかは消えてしまうのですね。
そ、そんなのいやだ~!




おわり




これはUSBメモリに埋もれていた作品です。
書きかけのまま放置していたものです。
書き直しているうちにいろいろ矛盾が出て来て、それをことごとく修正して出来上がりました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-03-16 00:28 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

Web光文社文庫

a0152009_10512443.jpg

Web光文社文庫「SS(ショートショート)スタジアム」で僕の作品を掲載していただいています。
昨日、3月11日に更新されました。
また覗いてみてください。

こっちの方をがんばっているせいで、ブログの更新が滞ると言う事もないはずです。
ツイッター小説以外の、長いめの小説を書くと言う事が日常になってきた感じですね。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-03-12 10:33 | わたくし事 | Comments(4)

雨の日のカノン (3枚)

はるさんが朗読の動画にしてくださいました。


その1 ブランコ

雨の公園で濡れるのもかまわずにブランコに乗っていた。
誰にも会いたくなくて、ゆらりゆらりとゆられている。
なんどもなんどもくりかえす。
弱く強く、またゆるやかに。
まるでカノンだね。
パッフェルベルの「カノン」だ。
あの優しいメロディーがどこかから聞こえるような気がした。
ただ優しく、同じメロディーをなんどもなんどもくりかえす。
ただくりかえすだけじゃない。
くりかえすたびにそのメロディーは違う表情をみせてくれる。
いつまでも聞いていたい。
いつまでもゆられていたい。
あたたかい雨に包まれて雨のカノンを聞いている。

でもやっぱり気がついてしまう。
わたしはこうやって雨に濡れながら。
ブランコにゆられながら。
カノンのメロディーに浸りながら待っているんだと。
ブランコの後ろから聞こえる誰かの足音を。



その2 ビニール傘

そろそろこの部屋の窓の外を、クラブ帰りの君が通る時間。
泥だらけになったユニフォームが入ったカバンを肩にかけて。
雨だからあの大きなビニール傘をさしているはずだ。
君がもうすぐあの道をやってくる。

わたしはピアノを弾きはじめる。
君のために。
明日には転校してしまう君のために、君の好きだったこの曲を。
パッフェルベルの「カノン」だよ。
同じメロディーが表情を変え、音色を変えしながら繰り返す。
この曲って君とわたしの過ごした短い時間のようだね。
同じメロディーが複雑にからみあい、また単純なメロディーで繰り返す。
君の姿が雨の街角に小さく見える。
そしてだんだん大きくなる。
わたしは涙を流しながらカノンを弾き続ける。
君にこの音色が届くよう。
そして君がこの窓を見上げてくれるよう。
雨のしずくが流れる透明な傘を通して、君と目が合えばどんなにいいだろう。

君はそのまま窓の下を通り過ぎる。
その足取りを緩めることもなく。
わたしはカノンを弾き終わり、電子ピアノのヘッドホンを外す。
アパートの部屋ではピアノの音が出せない。



おわり



ツイッター小説で一番たくさん書いたのは、タグ「#秋雨のカノン」じゃないかと思います。
その中から二編を長くしてみました。

はるさんのブログはこちらゆっくり生きる

はるさんの朗読を聞きながら、しっとり、ウルウルしていました。
雰囲気のあるとても好きな朗読になりました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-02-20 15:20 | 掌編小説(新作) | Comments(5)

こわいゆめ (1枚)

a0152009_171115100.jpg

こわいゆめからさめたとき、ぼくはあせびっしょりだった。
まだしんぞうがドキドキと、きもちわるいほどにはやくおおきくうっていた。
とけいをみるとまだまよなかだった。
きゅうにこころぼそくなって、ぼくはママをさがした。
あのこわいゆめのことをはなして、なぐさめてほしかったんだ。
ママのしんしつはドアがひらいたままで、ベッドにはだれもいなかった。
かいだんをおりて明かりがついているだいどころに行った。
テーブルの横にママが血だらけで倒れていた。
それはあの恐い夢と一緒の場面だった。
一緒だったのでかえって驚きはしなかった。
やがてすっかり記憶がよみがえった。
俺はもう大人になっている。
口うるさい、文句ばかり言うお袋を殺したのは俺だったのだ。
死んだばかりの様に見えていたお袋は、元の姿に戻った。
ドレスを着た白骨死体。
それが今のお前の本当の姿だ。




おわり



この作品を、ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読してくださいました。
いつもありがとうございます。



イメージとしては、声が子供の物から大人に、徐々に変化した方がいいかなと思っていたのですが、このいきなり変わると言うのも迫力があっていいですね。
ドキッとしました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-02-08 17:12 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

節分あれこれ (3枚)

a0152009_2242012.jpg

「玄関に何を飾ってるの?」
「節分にはねえ、これの頭を玄関の外に吊るしておくと魔よけになるって」
「そうなんだ?だけどよくそんなのが捕まえられたね」
「そりゃあ大変だったよ。このために猟銃の免許をとったりね」
「ちょっと失礼。それを見せてください」
「あなた誰ですか?」
「日本自然保護協会の者です。イヌワシは希少野生動植物種で天然記念物なんですよ」
「え?それで?」
「節分に玄関に飾るのはイワシの頭!」




「憎しみは新しい憎しみを生み出すだけです。形の上だけは戦うのもいいでしょう。豆の代わりにマシュマロやチョコレートを撒きましょう。キャンディーや甘納豆もいいですね。地面に落ちても、それを拾った鬼たちが食べられるように、ちゃんと個別包装されたお菓子を撒く事にしましょう」
毎年の節分には甘いお菓子が撒かれるようになり、鬼たちはその味を覚え、日常的に甘いものを食べるようになりました。
そして糖尿病や虫歯の鬼が増えて行ったのです。
鬼の国にはお医者さんがいません。

「にた~り。鬼退治はこうやらなくちゃね」 




「あ、いたぞ。あそこに鬼の親子だ」
「こいつらもやっつけてやろうぜ!ほら、豆の用意はいいか?」
「あ、ちょっと待って。見逃してやろうよ」
「なんでだよ?」
「あの鬼の親子、切り株に座って恵方巻を食べてるじゃん」
「かなわねーなあ。最近の鬼は」




鬼の棲む島に今日も爆撃機が向かいます。
爆弾はもちろん大豆です。
島全体に炒った大豆を大量に撒くのです。
何日も、何か月もそれが続きました。
いつしか、島全体が大豆に覆われ、生態系が完全に破壊され、まともに食料が採れなくなり、鬼たちは滅びました。
何年か後。
しっかり炒られてなかったいくつかの大豆が芽を出し、空高く伸びました。
それはどんどん伸びて行って雲の上まで届いたのです。

やがてその豆の木を伝い、天空の大鬼たちが仲間の復讐に大挙して降りてきました。




「玄関に何を飾ってるの?」
「節分にはねえ、これを玄関の外に吊るしておくと魔よけになるってさ」
「何それ」
「石清水(いわしみず)八幡宮のお札」
「それは節分でなくても魔よけになると思うけど。石清水じゃなくて、イワシなの!」
「じゃ~これにしようか?」
「それは岩津(イワツ)ネギ!だんだん無理やりになって来た」



おわり



これまでに書いたツイッター小説で、二月三日前後に書いたものを見てみると、節分テーマの物が結構ありました。
それを長くしたものです。

写真は「フリー写真・イラスト素材(ロイヤリティフリー)Photo Chips」さんからお借りしました。

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-02-02 22:09 | 掌編小説(新作) | Comments(2)

名探偵失踪 (2枚)

a0152009_1753999.jpg

画像は雑貨通販サイト「shipton」さんでお借りしました。「おしゃれな真鍮ルーペ」


近頃、街では殺人事件が頻繁に起きていました。
それもみな警察の手に余る複雑怪奇な事件ばかりでした。

しかしその殺人事件の謎を解き、ことごとく犯人を特定してしまう天才的な名探偵が現れたのです。
今日も今日とて……

「犯人はお前だ!」
事件関係者が集められた部屋の中で名探偵は声を上げました。
指さされた男は顔色を変え、逃げ出そうとしましたが、その場に居合わせた警官によって取り押さえられました。
「いやあ、お見事です。あなたの名探偵ぶりは後世まで語り継がれることでしょうな」
でっぷりと太った警部が名探偵に握手を求めました。

その時、一人の少女が名探偵の前に歩み寄ります。
「犯人がわかっても死んでしまったパパは生き返らないわ!」
そう叫んで少女はその場に泣き崩れました。
「君はあの被害者の娘さんだね」
名探偵は優しく少女を抱き起します。
そして涙があふれたその瞳を見つめながら言いました。
「そうだね。私は少しも君の力になれなかったね。許しておくれ」

その日以来名探偵は姿を消しました。
探偵事務所にも明かりが点かず、ずっと鍵が掛かったままでした。
警部が何度も訪れましたが、ようとしてその行方は知れませんでした。

しかしその後、街では殺人事件が驚くほど少なくなりました。
喧嘩や強盗などによる単純な、突発的な殺人事件はあったものの、以前のような謎に満ちた警察の手に余る事件が全くなくなったのです。

人々はうわさをしました。
「あの名探偵が事件の起きる前に解決しているんだね」と。



おわり



きのう書いたツイッター小説を長くしてみました。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくれました。
いつもありがとうございます。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-01-08 17:13 | 掌編小説(新作) | Comments(4)

名作パロディー・日本編 (8枚)

a0152009_10301466.jpg

☆鶴の恩返し その1

ある雪の降る晩のことでした。
戸を叩く音がしたので男が出てみると、白い着物を着た美しい娘が立っていました。
「私の名前はつうと言います。道に迷っております。一晩泊めて下さいませんか?」
するとそれを見ていた女房がいきなり男の顔をこぶしで殴りました。
「あんたまた別の鶴を助けたね!このスケベおやじ!」
娘は呆気にとられて男を攻撃する鶴を見ていたと言います。



☆かさじぞう

「ただいま。傘が売れ残ってしまったので峠のお地蔵さんにみんなかぶせてあげたよ」
「まあ、まあ、それはよい事をしましたね」
「それで請求書を一番大きなお地蔵さんの前に置いてきたよ」
「まあ、まあ、それで?」
「金を払いに来なきゃ、預金でも差し押さえようかのう」
「ばちが当たっても知りませんよ」



☆一寸法師

「ちょっと、ちょっと、ちょっと法師さん」
「え?何ですか?(女子高生の三人組だ。なんかやな予感がする)僕は一寸法師だよ。これからお椀の船に乗って…」
「あんたの名前さ、スマホで調べると一寸(ちょっと)法師って出たのよね。つまり身長がちょっとしかないってこと?」
「いや一寸(いっすん)だから」
「え?ど、どゆこと?」
「あ~、説明がめんどくせ~」



☆浦島太郎

乙姫様は浦島太郎と別れるのがあまりにつらいので一緒に付いてきてしまいました。
太郎はあたりの様子を見渡し、驚きます。
「何という事だ。私の村はすっかり変り果て、知っている人が一人もいない。どうすればいいのだ」
太郎はしばらく呆然としていました。
「そうだ、この玉手箱を開けてみよう」
「そうするのが一番です」
「乙姫や。開けるからこっちにおいで。なんでそんな遠くに離れるんだ?」



☆さるかに合戦

カニ、栗、蜂、馬ふん、臼(うす)は力を合わせてサルをこらしめましたとさ。
めでたし、めでたし。

後日勝利を祝うために飲み会が開かれましたが、なぜか馬ふんだけが呼ばれませんでした。
「そりゃー僕は臭いかもしれないけれど、一緒に戦った仲間じゃないか!くそー、仕返ししてやる」
第二部の始まりです。



☆こぶとりじいさん

まあ、おじいさんたら。
きれいにこぶが取れたわね。
しかもお肌がピッカピカ。
そうなの?
鬼に取ってもらったの?
そこを紹介して頂戴。
しわを取ってもらいに行くからさ。



☆桃太郎

おばあさんは八百屋さんで六個入りパックの桃を二パック買ってきました。
おじいさんと二人で食べようと切ってみると、なんと中から小さな男の子が生まれたのです。
「おお、これは可愛い男の子じゃ」
おじいさんとおばあさんは大喜びです。
「桃太郎と名付けて大事に育てましょうね、おじいさん」
二つ目の桃を切ってみるとまたまた同じように男の子が生まれました。
「なんと、二人目も生まれたか。お前の名前は桃二郎だぞ」
そんな感じで、三つ目は桃三郎。
四つ目は桃四郎。
五つ目は桃五郎と名付けました。
そしてなんと六つ目の桃からは男の子と女の子の双子が生まれたのです。
さすがにげっそりしたおじいさんとおばあさんは、まだ開けてなかった二つ目の桃のパックを八百屋さんに返品に行きました。
ちゃんとレシートを持って。



☆ねずみの嫁入り

「ねえ、お父さん。そろそろ娘にもお婿(むこ)さんを見つけなくてはいけませんね」
「そうだな、うちの娘は世界一頭の良い男と結婚させたいものじゃの」
「一番賢いと言えばあなた、ある大学に在籍しているネズミがいると聞きましたよ」
「よし!そのネズミに会いに行って来る」

「おお。ここが早稲田大学理工学部と言うところか?おや。あそこにネズミがいるぞ。あれがうわさの・・・」
「あなたはどなたですか?」
「私は私の娘を世界で一番頭の良いネズミと結婚させようと思っているんです。大学にいるるネズミさんなら賢いだろうと思ってね」
「こんな所に来ちゃだめですよ。ああ~!ほら、捕まっちゃった」

「なんだ?薄汚いマウスだな。どのゲージから逃げ出したんだ?」



☆花咲か爺さん その1

「枯れ木に花を咲かせましょう」
そう言っておじいさんが灰をまいた時、風が吹いておばあさんにかかってしまいました。
「あー、どうせわたしゃ枯れ木だよ」
「違うんじゃよ婆さんや」
二人は老年離婚してしまいました。



☆花咲か爺さん その2

「枯れ木に花を咲かせましょう~」
そう言ってお爺さんが灰を勢いよくまいたとき、突風が吹きました。
そして、灰はそれをまいたお爺さんの顔に嫌と言うほどかかったのです。
「いててて……」
お爺さんの唇には赤いぶつぶつが。
「うわあ。熱の花(口唇ヘルペス)が咲いた」



☆舌切りすずめ

「お土産は、大きなつづらと小さなつづらと、どちらがいいですか?」
と、すずめたちは言いました。
「今度はひっからないよ、両方もらってくからね!運送屋さん、こっちだよー」
悪いおばあさんはスズメのお宿の扉を閉めました。
「焼鳥屋さんも仕事を始めておくれ」



☆鶴の恩返し その2

吹雪の夜に誰かが戸を叩く音が聞こえた。
「ここを開けてくださいな」
おじいさんとおばあさんが戸を開けると、そこには美しい一羽の鶴が立っていました。
「とうとう開けてしまったのですね」
鶴は悲しそうにそう言うと、遠くの空へ飛び去ってしまいました。
「今のはなんなんでしょうおじいさん?」
「昼間助けた鶴に似ていたようじゃが、はて?」




おわり



あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

大みそかにアップした「名作パロディー・西洋編」の続編です。
りんさんのブログ「りんのショートストーリー」でアップされた「名作パロディー」の作品のコメント欄に、僕も同じタイトルで書くのが恒例になってしまい、いつの間にかこんなに溜まっていました。
西洋編も日本編もごちゃまぜで書かれていたのを今回分けて、更にちょこちょこ手を入れて、しょーもないものは削除してアップしています。

ブログ「ゆっくり生きる」のはるさんが朗読の動画にしてくれました。
いつもありがとうございます。


ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2016-01-01 10:40 | 掌編小説(新作) | Comments(5)

名作パロディー・西洋編 (7枚)

a0152009_1842795.jpg

☆マッチ売りの少女 その1

「おじさん一つ買ってくださいな」
「おやおや、かわいそうに。最近、こんな寒い夜にひとりマッチを売る少女がいると聞いたんだけど、あなたの事ですね。私がぜんぶ買ってあげましょう」
「ぜんぶですか?そんなにお金があるの?おじさん」
「え?たかがマッチだろ?」
「マッチもあるけど、今は主にライターを売ってるのよ。ジッポーの限定デザインばかり。ほら、このビートルズ来日記念モデルは15万円よ」



☆シンデレラ その1

「ああ、ガラスの靴がピッタリだ。あなたこそ、探し求めていたプリンセス。僕と結婚してください。そしてこれがダイヤの結婚指輪です。12カラットあります」
「まあ素敵!でもこんなに高価な物・・・」
「ほら、こっちの靴はガラスの靴をモデルにしてダイヤモンドを100個ちりばめて作らせたんだぜ。いやあ、お金がかかっちゃったなぁ」

二人は結婚したものの、王子様の王国は間もなく財政破たんに陥ります。



☆白雪姫

「♪ハイホー、ハイホー俺たちは♪みんな仲良し、ハイホー、ハイホー♫」
「あれ?なんだか俺たちの家の前にたくさん人がいるよ」
「でっかいカメラを持ってるやつもいるぜ」
「あいつはマイクを持ってる」
「おかえりなさ~い」
「白雪姫。この人たちは誰なんだい?」
「CM制作会社の人よ。あなたたちはプロバイダーHi-Ho(ハイホー)のCMキャラクターに決まったのよ。私がマネージャーをやるわね」



☆赤ずきん

「赤ずきんちゃ~ん。どこに行ったんだ~」
「赤ずきんや。もうすぐ結婚式が始まるよ~」
「新郎さんはもう用意が出来てますよ~」
「ここにいるわよ!白いウエディングドレスを着ちゃうと存在感ゼロね、わたしって」



☆白雪姫

「赤ずきんや。この毒りんごを持って白雪姫の所へ行ってきてちょうだい」
「お母さん。まだボケる歳でもないでしょ?」



☆おやゆび姫

チューリップの花が開くと、そこには小指ほどの小さな女の子がいました。
「私は小指姫です」
「なんだよ。普通、チューリップには親指姫でしょ?」
「いえ、この花はクルシアナペパーミントスティックと言う名前で、チューリップの原種と言われていて、チューリップより花が小さくて・・・」
「どうでもいいわよそんなこと!」



☆ピノキオ

ピノキオは、クジラのおなかの中でゼペットじいさんと再会しました。
「おじいさん!やっと見つけたよ。こんな所で何か月も何を食べて生きてたの?」
「何って、ほらクジラ肉が有り余るほどあるじゃろ」
「ああ、それでなんだね。このクジラは胃痛で病院に診てもらいに来たんだよ」



☆3匹の子ブタ

「ふう、やっとレンガの家が出来上がった。あれ?お兄さんたちが逃げてきた。オオカミに追われてるぞ。早く早く。ぼくの家に入って」
ガラガラグシャ!
「レンガの家がこわされちゃった~」
「早く早くこっちだよ」
「あ、あれは行方不明だった一番上のお兄さんだ」
「さあ、このコンクリート製の要塞は大丈夫だよ。機関銃も大砲も装備してるしさ」
子ブタたちは4人兄弟だったのです。

やっぱり一番年上のお兄さんが一番賢いね。



☆はだかの王様

「あっ、王様は裸だ~」
「わしのパソコンにウイルスバスターを入れてくれ。子供にハッキングされてウェブカメラで見られとるぞ」



☆美女と野獣

全ての魔法が解けました。
野獣に姿を変えられていた王子は元の姿に。
美女に姿を変えられていためすブタも、ちゃんと元の姿に戻りました。
めでた……



☆マッチ売りの少女 その2

「これが最後のマッチだわ。見えるわ。幸せそうにクリスマスを過ごしている家族が。みんな笑顔で、暖かそうな服を着て、ご馳走を前にして……」
少女の持っているマッチは最後まで燃え尽きようとしていました。
「あち~!!ばかやろ~!火傷しちゃったじゃねーか、くそったれ!」



☆シンデレラ その2

「あー、舞踏会楽しかったわねー」
そう言いながらシンデレラはガラスの靴を揃えて靴箱にしまいました。




おわり




これはりんさんのブログのコメント欄に埋もれていた短いお話です。
りんさんの書くパロディーに刺激されて、読んだ後にその場で書いたものがたくさんたまったのでまとめてみました。
「名作パロディー・日本編」は来年早々アップする予定です。

今年は一年間ありがとうございました。
ちょっと更新のスピードが後半落ちてしまいましたが、来年は頑張ろうと思います。
よろしく~

ランキング参加してます。
クリックであなたに幸運が(笑)
    ↓
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

# by marinegumi | 2015-12-31 18:47 | 掌編小説(新作) | Comments(0)